こんにちは、獣医師の白井顕治です。
この記事では、咳が出るという症状について情報を記載させていただきます。
より正確に、咳をしている症状は医学的には発咳(はつがい)と言います。
咳にはいくつかの種類がありますが、気道もしくは末端の方の気管支が何らかの刺激を受ける事のよって、呼吸と比べて空気をより勢いよく吐くことが発咳です。
いくつかの基準で分類することができます。
呼吸器組織は、口や鼻で吸った空気が、咽頭・気管・気管支・細気管支・肺胞の順に奥に行って、最後の肺胞で、血液に酸素を送り届けます。
(本当はもう少し細かく分かれますが、少し簡略化します)
主に咽頭や気管、上部の気管支などの太い気管支などが刺激をされると、大きな音の発咳が出ます。
「ゴホッゴホ」や、「ガッガ」など、大きな音を立てて、気管の中の刺激の原因物を外に出そうとするような咳ですね。
それに対して、末端の気管支が刺激されると、「コフッコフ」といったような小さい音の咳になります。また、上記した大きな音の咳は、自分の意志でしたいタイミングで出しているのに対し、この細かい咳は、呼吸のタイミングでコフコフ出していることが多く、このような咳がひどくなってしまった場合には安眠ができなくなってしまうケースもあります。
次に、原因についてですが、発咳が認められる場合に、大きく分けて呼吸器疾患である場合と、循環器疾患(心臓病)である可能性が考えられます。
全く違うものに感じるかもしれませんが、中高齢のペットになると、軽度の心臓病を持っているケースも多いため、呼吸器由来の咳なのか心臓病由来の咳なのかはいくつか検査を行わないと区別できないことも良くあります。
呼吸器疾患の場合に考えられる病気としては、感染性の気管支炎や、種々の原因による慢性気管支炎、異物性の気管支炎や場合によっては腫瘍性の事もあります。(異物性や腫瘍性の時には、呼吸困難が強く出る場合もあります。)アレルギー性の気管支炎が疑われる場合もあります。
循環器疾患の場合には、弁膜症や心筋症など、種々の原因で心拡大を起こした結果、拡大した心臓が気管支や肺を圧迫することによって出る事があります。肺に水が溜まってしまう肺水腫では、肺に軽度の炎症は生じるものの、発咳は主な症状とは言えません。
呼吸器の診断を難しくしている要因の一つとして、検査材料が得にくいという点が挙げられます。人間の場合にはそれでも喀痰などを用いた検査をすることもできますが、ペットでは単は得られにくいです。
培養検査や細胞検査をするためには、麻酔下で気管支内視鏡を行う必要などがある事から、呼吸器専門診療以外の一時診療施設では、レントゲン検査やエコー検査、透視検査などの画像診断検査に基づいた試験的治療に対する反応で診断を下していくことが多いです。
数日間発咳が継続するようであれば、それ以上様子は見ずに、動物病院を受診しましょう。