佐倉しらい動物病院ブログ

【獣医師監修】犬の膿皮症とは?症状と治療法について|

犬の膿皮症とは

膿皮症は犬に多く、猫に発生することは稀です。膿皮症は皮膚表面に何らかの感染が生じて、化膿してしまっている状態を指します。

膿皮症の種類

膿皮症は感染が起こっている深さによって表在性膿皮症と深在性膿皮症に分けることができます。

表皮の表面にできています。表在性膿皮症です。

深い部位で発生している深在性膿皮症

また、皮膚と粘膜の中間に発生する場合には粘膜膿皮症と呼ばれることもあります。

表在性膿皮症の原因

表在性膿皮症の場合にはほとんどがブドウ球菌の感染によります。深在性膿皮症の場合には、球菌以外に桿菌や真菌、放線菌などが原因となることもあり得ます。

表在性膿皮症は、単独ではあまり発生しないとされており、膿皮症が発生する原因の疾患や状態があることが考えられます。例として、アトピー性皮膚炎やニキビダニ症、マラセチア性皮膚炎などの皮膚の疾患に続発している場合や、脂漏症や脱毛症などの異常な皮膚の環境によって発生しやすくなっている場合があります。また、内分泌疾患やステロイド剤の投与、加齢による免疫力や皮膚バリア機能の低下が原因となっていることもあります。

膿皮症の症状とは

基本的にはかゆみ、発赤、ふけ、べたつきなどが挙げられます。表在性膿皮症は比較的強いかゆみを呈します。膿がたまっている膿胞が形成されるのが病期としては最初ですが、掻き壊してしまい膿胞が破裂した状態で来院されることがおおいです。

原因疾患を探すうえで、

・かゆみが出てから、膿皮症が発生したのか

・膿皮症があってそこをかゆがっているのか

という区別も診断には大切な情報となります。

表在性膿皮症の診断

表在性膿皮症の診断はそれほど複雑ではありません。膿胞や痂疲の下を細胞診して、細菌を貪食している白血球や、細菌、変性した好中球を確認することによって表在性膿皮症と診断します。

膿胞が形成されていても、免疫異常によって形成されていることもあるので、細菌を貪食している白血球を確認することは重要です。

また、表在性膿皮症自体ではなく、原発疾患の有無の診断が重要となりますので、場合によっては血液検査や皮膚掻爬(そうは)検査、抜毛検査なども重要になります。また、表在性膿皮症は繰り返すことや、治ってはできてを繰り返すこともあるため、位置や大きさの記録も重要と言えます。

膿胞が形成されています。ここを掻いて破裂すると、表皮小環が形成されていきます。

表皮小環が形成されています。検査を行った結果、いずれも表在性膿皮症でした。(原発疾患は個々の症例で異なります)

表在性膿皮症の治療

最も重要な点は基礎疾患がわかっている場合には、その治療を行うことです。基礎疾患が存在し、そこに続いて表在性膿皮症が発生している場合には、基礎疾患を治療しないと膿皮症はいつまでも治りません。正確には、一時は治りますが、繰り返し発生します。原発疾患は、疾患によって合った治療を実施します。

表在性膿皮症の治療は、抗生剤や消毒剤の使用によって行います。病院によっても治療方針が異なります。当院での治療を例に挙げると、外用剤やシャンプー剤を使用してコントロールができない場合には、抗生剤の内服による治療を試みます。

抗生剤を使用する際は細菌感受性検査を実施して、どの抗生剤が効果的かを判断してから使用することが望ましいです。

深在性膿皮症とは

深在性膿皮症は真皮やそれよりも深い場所に細菌や真菌、放線菌などが感染することによって発生します。表在性膿皮症と比較しても重症度はより高く、診断には皮膚生検が必要となります。

↑真菌性の深在性膿皮症

↑細菌性深在性膿皮症

繰り返す膿皮症

治療の項目でも記載しましたが、「繰り返す」「なかなか治らない」膿皮症は、まず原発疾患を探します。難しいのは、脱毛症や体質的に皮脂腺が過形成している場合など、原発疾患の完治が難しい場合です。その場合には、スキンケアや保湿を行い膿皮症の完治ではなく、発生頻度を下げることを目標にケアをしていくことが重要です。いずれのケースでも、治りにくい膿皮症には何らかの原因があることがほとんどであるため、次々に薬を変えたり、増やしたりすることより、治りにくい理由を探すことが重要です。

フレンチブルドッグや、右の写真の症例のように被毛に異常があるような場合には、膿皮症は治りにくく、再発しやすい。細かなスキンケアが重要となる。

症例紹介

フレンチブルドッグの毛包炎(毛包から発生している膿皮症です)

コーギーのアトピー性皮膚炎(下腹部に膿皮症が形成されています)

柴犬の深在性膿皮症

柴犬の口唇に形成された粘膜膿皮症

膿皮症の治療費用はどのくらい?

治療費用は2つの要因で変わってきます。

一つが、原因の疾患や併発疾患の有無。もう一つが、ご家族の治療方針です。

一つ目の原因疾患や併発疾患の有無については、イメージしやすいかと思います。前述のとおり、膿皮症は単独で発生することは稀であるため、原因の疾患や併発疾患の治療が重要となります。その疾患によって、使用する薬剤や、使用する期間が異なってきます。

また、ご家族の治療方針というのは、主にどのような治療手段を選ぶかということに関わってきます。もちろんダイレクトに「安いほうがいい」というように選択する場合もありますが、最もよくあるケースとしては

・薬を飲むことができない

・体を洗うと噛みついてきてしまう

・できるだけ内服ではなく、シャンプーで治してあげたい

・シャンプーする時間がない

などです。

こういった要望をかなえながら治療方針・治療内容を調整していきますので、膿皮症の治し方は一つだけではありません。

通常は、複数の治療手段があることがほとんどです。(ちょっと併発疾患や体質的に込み入っている症例に対しては、そこまでたくさんの選択肢はありませんが。)

ですので、結論から言うと、その子の状態を診断してもらい、治療内容を相談することによって決めていきます。繰り返しになりますが、併発疾患や原発疾患が存在することが多く、再発してしまうこともあります。そのため、「治療費用はおよそ〇〇円です」とはなかなか答えることができません。

診療費用について

著者プロフィール

白井顕治(しらい けんじ)副院長

獣医師、医学博士、日本動物病院協会(JAHA)内科認定医・総合臨床認定医

千葉県で代々続く獣医師の家系に生まれ、動物に囲まれて育って、獣医師になりました。「不安をなくす診療」を心がけて診療にあたるとともに、学会参加や後継の育成を行っています。

お気軽に
ご相談ください

志津しらい動物病院043-462-1122 受付時間 9:00~11:30 15:00〜18:30

佐倉しらい動物病院043-483-1212 受付時間 9:00~11:30 14:00~17:30

お問い合せフォーム
インターネットでカンタン相談

病院案内アクセス
駐車場有・近隣にコインパーキング有