実績詳細

手術をしないで経過を観察したトイプードルの乳腺腫瘍の経過

種類 トイプードル
年齢 12歳
診療科目 軟部外科・整形外科 腫瘍科 
症状 おなかから膿が出ている

症状の概要

犬の乳腺に腫瘍が認められた場合に、手術をしないとどうなるかという質問をよく受けます。実際には良性の乳腺腫瘍を発見した段階で手術適応となるため、発見したのにもかかわらず手術をしないで経過観察しているという状況が珍しい症例でしたので、紹介します。乳腺癌は、原発性に発生する場合と、良性の乳腺腺腫から悪性化して乳腺癌が発生する場合があります。明確なデータは持っていませんが、半年~2年ほど経過すると、急速に増大する時期が来ることが多いような印象を受けます(論文的な裏付けがない私の体感の数値です。)急速に増大してから検査、摘出を行うと、乳腺癌や骨肉腫などの悪性腫瘍に進化しているという症例に比較的よく遭遇します。乳腺の腫瘍が大きくなった場合には、自然に破裂したり、症例が痛痒くてかんだり引っかいたりすることによって、腫瘍が破裂・自壊してしまい、症例が腫瘍をなめたり食べたりしてしまうことがあります。やむを得ない状況はありますが、乳腺腫瘍が発見された段階で、対応を考えたほうが良いといえます。

検査結果

症例は、前十字靭帯の断裂を起こし、手術予定であった。

 

断裂の診断をしてから手術日までの間に、子宮蓄膿症を発症した。

 

保護犬であるため、正確な年齢は不明であるが、推定で12歳という年齢であることと、膝の前十字靭帯断裂に対する手術を行う予定であったため、同時に卵巣と子宮を摘出することとなった。

子宮蓄膿症の手術

前十字靭帯の断裂に対する手術も通常通り終了した。

 

乳腺に複数の小型の腫瘤が確認されたが、ご家族と相談した結果、今回の手術において卵巣と子宮を摘出することで、成長が鈍化することを期待して、乳腺の腫瘤についてはこの手術では行わないこととした。

 

 

(膝と子宮蓄膿症については良好に治り、普段通りの生活を送っていた。)

 

 

術後11か月経過した際に、【おなかから膿が出ている】という主訴で来院した。

 

 

下腹部の乳腺腫瘍が拡大、自壊して膿と漿液が混ざった液体を排出していた。

 

 

治療方法

検査を行うと、自壊部分以外にも左右乳腺全般に腫瘤が散在していたため、1回の手術で摘出するために左右乳腺全摘出を実施した。

 

 

自壊した乳腺腫瘍

腹筋筋膜を底部マージンとして乳腺を切除した。

 

皮膚再建を行い、術後12日後に全抜糸を行った。

 

 

 

 

治療・術後経過

病理検査結果として、自壊していた乳腺のみ乳腺癌という診断で、そのほかの腫瘤は良性の乳腺腺腫であった。

 

摘出状態は水平マージン・垂直マージンともに良好であったが、腫瘍は右鼠経リンパ節に初期の転移性病変が認められたということであった。

 

ご家族と相談し、こまめに定期健診を行い、転移病巣が確認された段階で抗腫瘍薬の使用を行うプランで行くこととなった。

 

担当医・執刀医:白井 顕治

お気軽に
ご相談ください

志津しらい動物病院043-462-1122 受付時間 9:00~11:30 15:00〜18:30

佐倉しらい動物病院043-483-1212 受付時間 9:00~11:30 14:00~17:30

お問い合せフォーム
インターネットでカンタン相談

病院案内アクセス
駐車場有・近隣にコインパーキング有