目次
はじめに
咳が出る症状のことを、「発咳(はつがい)」や「咳嗽(がいそう)」と呼びます。呼吸器は皮膚疾患などと異なり、異常を感じても患部から細胞や細菌検査を実施することが難しいため、試験的な治療を実施して、その反応を含めて診断をすることも多い診療科です。
内科療法に対して反応しにくい、咳がなかなか止まらない、治らない時に考えられることを記事に書いていきます。
咳がよく出るタイミングは?
注意すべき点の一つとして咳が出るタイミングが挙げられます。例えば朝方が多い、運動後に咳が出る、特定の部屋に入ると多い気がする、など咳がよく出るようなタイミングはあるか、もしくは関係なく1日中出てしまうという場合もあると思います。
また、タイミングではなく、特定の場所で咳が出るかなども重要な問診ポイントとなります。
箇条書きにしてまとめます。
- 朝・夕いつ咳が出ているか
- 運動時?
- 飲水時?
- 興奮時?
- 安静時にも出る?
- 睡眠時は?
- 特定の場所や部屋で出る?
咳以外の症状は?
咳が長引いているという以外に、体重減少や発熱、食欲不振などの症状の有無も診断のポイントとなります。
ずっと咳が出ているけど、食欲もあり、元気もあるという場合もあります。こういった場合でも長期間放置すると気管支軟化症などの不可逆的な疾患になってしまうこともありますので、動物病院を受診して、しっかりと治療を行い咳を止めてあげましょう。
どのような病気の可能性がある?
咳が持続的に続いている場合には、慢性気管支炎や気管支軟化症、気管支拡張症などの存在が疑われます。
また、循環器疾患として心臓病がある場合もあります。
そのほかの疾患として、気管内腫瘍、気管内異物、気管虚脱、咽喉頭の異常、アレルギー性気管気管支炎、肺腫瘍、間質性肺炎においても持続する咳嗽が認められることもあります。
薬は効いている?
どの薬を飲んでいる時に症状が軽くなったか。逆にこの薬を飲んだけど変わらなかった、という事も非常に重要な情報です。
受診する際には、今現在飲んでいる薬だけでなく、ほかの薬も飲んだことがある場合には、これまで内服したお薬の種類や、飲んでみてどうだったかということも重要な情報となるため、記録の上受診しましょう。
大切なポイントを箇条書きにします。
- 抗生剤は効いているか?
- 抗生剤を変更するととどうなったか?
- ステロイド剤は使用しているか?
- 投与方法は内服のみか、ネブライザーなどの吸入も実施しているか?
呼吸器の病気以外で考えられること
咳、というと一般的に呼吸器の病気を思い浮かべるかもしれません。しかし、心臓の疾患でも咳が出ることがあります。心臓に負担がかかると、心臓が大きくなり、物理的に気管を圧迫するため咳が出てしまいます。
特にチワワやマルチーズなどの小型のワンちゃんは呼吸器と心臓の疾患を併発していることがあります。
・心臓の病状が非常に重度で、レントゲンを撮影しても肺や気管支はとてもきれい。
・心臓は全く悪くなくて、レントゲンで確認すると重度の気管支炎を患っている
など、非常に極端な例の場合には発咳の原因はすぐにわかりますが、現実的に考えると、中高齢の問い犬種である場合には、心臓も呼吸器もどちらも少しづつ悪く、どちらかと言えば…というようなケースがほとんどです。こういった場合には、検査あるいは治療を行いながら、どちらが咳のメインの原因なのか判断していきます。
必要とされる検査
一般的に心臓の大きさや気管・気管支・肺の状態を見るために胸部レントゲン検査、気管や気管支疾患を疑う場合は動的な変化を見るために透視レントゲン検査を行います。
また、必要があれば心疾患の除外のために心臓のエコー検査も行います。
そのほか、発咳の状態や一般状態によっては、全身状態や炎症の数値を確認するために血液検査を実施したり、どうしてもレントゲンやエコー検査においてはっきりとわからないような場合には、CTや気管支内視鏡が必要となる場合もあります。
まとめ
発咳がひどいと、夜も眠らない、食べたものも吐いてしまうなどの症状に進行してしまったり、慢性的な発咳が継続することによって、気管支に不可逆的な損傷を起こしてしまったりする可能性もあります。
わんちゃんの咳が止まらないなーと感じた場合には、お気軽にご相談ください!
千葉県でペットの呼吸器疾患でお困りの方は志津・佐倉しらい動物病院へ。
著者プロフィール
獣医師 吉川未紗
日本獣医生命科学大学付属動物医療センター 呼吸器科・腫瘍内科 研修生