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犬のてんかんと、その原因は
てんかんとは、大脳から強い電気信号が出されるために、けいれんなどの発作の症状を繰り返してしまう疾患です。犬にも猫にも認められることがあります。犬と猫を比較すると、犬では猫の2倍程度の発生率です。
「繰り返してしまう」ことも条件に含まれるため、細かい話ですが、てんかん発作が一回のみの発生の場合は「てんかん」とはいいません。
てんかん発作の原因には、脳に何かしらの異常や疾患が存在し、それによって引き起こされる「症候性てんかん」と、脳に特に異常がないのにもかかわらず発作を繰り返す「特発性転換」があります。特発性てんかん発作の原因は不明ですが、遺伝子も発生に関与されていると考えられています。
すべての犬種に発生しますが、犬ではとても多く100頭に1~5頭ほどの割合で発生するといわれています。特発性てんかん発作は1~5歳で発症することが多く、それよりも若かったり、高齢だったりする場合には、腫瘍や脳炎などの疾患に続発した「症候性てんかん」の可能性があります。また、犬種によって特発性と判断してよいかどうかの基準が異なります。
基本的には犬では症候性てんかんと特発性てんかんの比率はおよそ半々ですが、犬種によって異なる場合もあります。例えば、フレンチブルドッグにおいては、特発性てんかん発作よりも脳腫瘍のほうが発生率が高いため、発生した年齢によってはほかの犬種と比較して、より強くMRIなどの高度画像検査を受けることが勧められます。
猫では9割が症候性てんかんと言われています。
犬のてんかんの症状は
てんかんは非常に様々な発作症状を呈します。代表的な症状は、手足を突っ張って痙攣する強直発作や、体ががくがく震える間代発作があります。
通常、これらの発作が起こっているときには動物の意識はありません。ほかには、筋肉がピク、ピクっと動くミオクロニー発作や、体の一部が突っ張る運動発作などがあります。
犬がてんかん発作を起こしたときの対処法
通常、てんかん発作が起こってそのまま致命的になることはまれであるため、声をかけながら動画を撮影したり、発作が起こっている時間の長さを測ったり、発作が起こった時の状況を記録しておくことが受診時に役に立つ情報となります。
流涎がひどいようであれば、タオルで拭ってあげることもよいのですが、無理に口の中を拭こうとすると無意識に非常に強くかまれてしまうことがあるため、注意が必要です。
犬のてんかんの治療法について
てんかん発作の治療においては、発作の重症度と回数が非常に重要です。1回あたり1~5分程度の単一発作が月に2回以上起こっているような場合や、群発発作や重責発作などの重症度の高い発作が起こっている場合に治療対象となります。
どのくらいの症状であれば治療対象にするのかは、繰り返しになりますが重症度を見ての各獣医師の判断となりますので、あくまで参考にとどめておいてください。
治療方法は特発性てんかん発作や、症候性てんかんで根本的な治療が行うことができないような場合には、抗てんかん薬の内服が行われます。抗てんかん薬の種類や量、定期的に血中濃度を測るかどうかなどは獣医師や動物病院によっても方針が異なると思います。より丁寧に行う場合には、内服させつつ、定期的にどのくらい薬剤が吸収されているか血中濃度を計測し、症状と合わせてモニタリングをしていきます。
費用について
費用は大きく分けて、内服の費用と定期検査の費用に分かれます。内服に関しては、どのくらいの薬を飲むとてんかん発作が落ち着いてくれるのかは個体差があります。特発性てんかんとしたとき、基本的に治療薬は「発作が出たら飲ませる」のではなく、「発作が出ないように毎日飲んでいく」薬であるため、診断された場合には毎日飲んでいくことになります。
検査に関しては、まずは診断のための検査と、定期的に抗てんかん薬を飲んているため、肝臓や腎臓の機能評価の目的や、血中薬物濃度を測る定期健診に分かれます。診断のための検査は血液検査やレントゲン検査、心電図や血圧測定、行うことができる場合にはCTやMRIなどの高度画像診断が行われます。
こういった部分で、費用が変わってきますので、主治医と相談の上、治療内容・検査内容・頻度を決めていく必要があります。
犬のてんかんの予防方法
てんかんには有効な予防法はありません。
ただし、まれに長い期間発作の症状を観察していると、特定の条件で発作を起こす症例もいるため、(山に登ると発作が出るなど)そういった場合にはその条件を避けることが発作の予防に有効なことがあります。
まとめ
てんかん発作は犬においては比較的発生頻度の多い症状です。発作の症状を正確に言い表すことは難しいため、発作が起こった場合には焦らずに動画を撮影しましょう。
千葉県、佐倉市近隣で、脳神経の病気を疑う症状が認められた場合には、お気軽にご相談ください。
神経疾患の診断および治療に関して経験豊富な獣医師が対応させていただきます。
千葉県佐倉市の志津・佐倉しらい動物病院
著者プロフィール
白井顕治(しらい けんじ)副院長
獣医師、医学博士、日本動物病院協会(JAHA)内科認定医・総合臨床認定医
千葉県で代々続く獣医師の家系に生まれ、動物に囲まれて育って、獣医師になりました。「不安をなくす診療」を心がけて診療にあたるとともに、学会参加や後継の育成を行っています。