佐倉しらい動物病院ブログ

【獣医師監修】猫の肥満細胞腫の診断や治療について解説

肥満細胞腫とは

体のいろんなところに存在する「肥満細胞(mast cell)」が腫瘍化することにより発生する腫瘍で、肥満細胞腫(MST)と呼ばれています。

「肥満細胞」という名前の細胞が腫瘍化しているだけなので、猫本人の体形が肥満かどうかは、肥満細胞腫の発生と全く関係がありません。

どのような病態があるか

猫の肥満細胞腫は大きく分けると体表に発生する肥満細胞腫と、脾臓に発生する脾臓型の肥満細胞腫に分類されています。

皮膚にできる肥満細胞腫

猫では、特に頭頚部の皮膚に肥満細胞が多く分布しているため、頭頚部に発生が多いです。ただし、体表のどこにでも発生する可能性はあります。

【猫の皮膚肥満細胞腫の症例】

脾臓にできる肥満細胞腫

猫の脾臓に発生する腫瘍としては頻度は多い腫瘍です。

進行して脾臓全体が肥満細胞腫に置き換わるレベルになると全身症状を出して発見されることがあります。全身症状は発熱や元気消失、食欲低下などですが、肥満細胞腫が放出するヒスタミンに関連して症状が出ることもあります。

また、脾臓型の肥満細胞腫では時に皮膚に転移を形成することがあります。そのため、体表に複数個の肥満細胞腫を認める場合には、脾臓を精査することによって小型の脾臓型肥満細胞腫が発見されることがあります。

【猫の脾臓型肥満細胞腫の症例(皮膚転移から発見)】

【猫の脾臓型肥満細胞腫(臨床症状が出ての発見)】

猫の肥満細胞腫の治療

基本的には手術による病変部位の切除と、ご家族と相談の上で追加の内科療法を実施するか決めていきます。

まとめ

猫の肥満細胞腫は犬の体表の肥満細胞腫と比較して良好な予後をたどることが多い疾患ですが、きちんと根本的な病変を発見することが長期的な健康を維持するために重要であることがわかっている疾患です。

きちんと検査を起こなって、管理していってあげましょう。

著者プロフィール

白井顕治(しらい けんじ)院長

獣医師、医学博士、日本動物病院協会(JAHA)内科認定医・総合臨床認定医

千葉県で代々続く獣医師の家系に生まれ、動物に囲まれて育って、獣医師になりました。「不安をなくす診療」を心がけて診療にあたるとともに、学会参加や後継の育成を行っています。

当院は国際ねこ医学会(isfm)よりキャットフレンドリーゴールド認定を受けている病院です。

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