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はじめに|毛づくろいが“多すぎる”のは病気かも?
猫は本来、きれい好きな生き物です。
一日の多くを毛づくろいに使うのは普通の行動ですが…
「気がついたらお腹の毛が薄くなっている」
「後ろ足の内側がツルツルに…」
「グルーミングの時間が妙に長い気がする」
こういった様子が見られたら、それは病気のサインかもしれません。
実は最近、こうした猫ちゃんの相談がとても増えているんです。
猫の過剰な毛づくろい、よくある原因とは?
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ストレス(環境の変化、来客、騒音など)
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ノミやダニによる皮膚刺激
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細菌や真菌感染症
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アレルギー疾患(食物アレルギー、アトピー)
この中でも近年増えているのが、アトピー性皮膚疾患です。
犬ほどメジャーな診断名ではありませんが、
「猫アトピー性皮膚症候群(FASS)」という新しい概念として知られ始めています。
実は「アレルギー」かもしれません|猫アトピー性皮膚症候群とは
犬では「かゆみ」が主な症状ですが、猫は少し違います。
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毛が薄くなる(特に腹部・内股・前足など)
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小さな赤み、かさぶた、プラーク(隆起)
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飼い主さんから見ると「かゆがってるように見えない」
そのため、**「毛が抜けている=脱毛症?」「老化かな?」**と見過ごされやすいのが特徴です。
ステロイドだけじゃない、治療の選択肢
当院では、治療をステロイドだけに頼ることはしていません。
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シクロスポリン(内服)
猫では効果が安定しやすく、ステロイドより副作用が少ないのが特徴です。 -
トリアムシノロンなどの力価の強いステロイド
症状が強く出ているときに、短期間でコントロールをつけるために使います。 -
スキンケアや保湿外用薬の使用
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食事療法(アレルゲン除去のための療法食)
猫の性格や、飼い主さんの通院可能な頻度、ご予算などに応じて、
一緒に治療の「組み合わせ」を考えるスタイルをとっています。
体験から見えた、猫アトピーとの付き合い方
ある猫ちゃんの例ですが、最初はお腹と後ろ足の毛が薄くなって来院されました。
前の病院では、ステロイドをもらっていたそうですが、「もう効かなくなった」とのこと。
診察の結果、シクロスポリンを使った治療に切り替えたところ、2週間ほどで赤みが改善。
現在では、週に1〜2回の投与で維持できており、ご家族もほっとされています。
当院での治療方針|一緒に考える皮膚ケア
猫の皮膚疾患は「この治療が正解!」というものがありません。
大切なのは、
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どういう治療の選択肢があるかを知る
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今の治療が本当に合っているか見直す
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「ずっと治らないなら治らないって言ってほしい」と思っている飼い主さんの不安を汲む
ことだと考えています。
まとめ|まずは「皮膚の違和感」に気づくことから
猫ちゃんの「毛が薄い」「グルーミングが増えた」そんな小さな変化も、
実は体からのSOSのサインかもしれません。
少しでも気になることがあれば、早めにご相談ください。
あなたの猫ちゃんにとって、無理のない、続けられる治療を一緒に見つけていきましょう。
著者プロフィール
白井顕治(しらい けんじ)院長
獣医師、医学博士
日本動物病院協会(JAHA)獣医内科認定医・獣医外科認定医・獣医総合臨床認定医
皮膚科にも注力しており、様々な治療プランをご家族と一緒に立てていき、治療を進めていきます。
当院は日本動物病院協会(JAHA)から認定を受けている動物病院です。
当院は国際ねこ医学会(isfm)よりキャットフレンドリーゴールド認定を受けている病院です。