目次
はじめに
セキセイインコは、日本国内でもっとも広く飼育されている小鳥のひとつです。鮮やかな羽色や人懐っこい性格で多くの家庭に迎えられ、飼い主さんとの会話やスキンシップを楽しませてくれる存在として愛されています。その一方で、小さな体のセキセイインコは特有の病気にかかりやすく、気づいた時には症状が進行していることも少なくありません。この記事では、セキセイインコに多い病気をランキング形式でご紹介します。
メガバクテリア症(AGY:Avian Gastric Yeast)
セキセイインコで非常によく見られる病気です。胃に寄生する特殊な真菌が原因で、体重減少や未消化のシード便が特徴です。中高齢の個体に多く、慢性的な食欲不振や元気消失の背景にこの病気が隠れていることもあります。
卵づまり(卵塞)
メスのセキセイで多発する産卵異常です。カルシウム不足や過発情、肥満などが背景となり、産卵できずに体内で卵が詰まってしまいます。急激に体調を崩すことがあり、命に関わる重篤な状態に発展することもあります。
腫瘍(脂肪腫・精巣腫瘍など)
セキセイインコは腫瘍性疾患の発生が非常に多い鳥種です。特に脂肪腫や精巣腫瘍は代表的で、高齢になるほど発症リスクが高まります。羽毛の乱れや体型の変化、呼吸困難などで気づかれることもあります。
毛引き症
自分で羽を抜いてしまう行動です。ストレス、栄養不良、ホルモンバランスの乱れなどが複合的に関与しています。見た目にすぐ異常が分かるため飼い主さんが気づきやすいですが、背景には複雑な要因が潜んでいます。
呼吸器疾患(細菌感染・マイコプラズマなど)
「ゼーゼーする」「鳴き声が変わった」といった症状で来院することが多いです。細菌感染やマイコプラズマの関与、または環境要因(ほこり・タバコ煙など)による影響も知られています。呼吸器は小鳥の命に直結するため、注意が必要です。
疥癬(トリヒゼンダニ症)
嘴や脚に白いかさぶたのような病変ができる寄生虫疾患です。セキセイインコに特に多く、外見で明らかな異常が確認できます。進行すると嘴や脚の変形を引き起こすこともあり、早期の発見が大切です。
肝疾患(脂肪肝症など)
肥満や高脂肪食(シード主体の食事)が原因で発症することが多い病気です。羽色の変化(緑便や出血斑)、元気の低下などで気づかれます。慢性経過をたどりやすく、生活習慣と密接に関わる病気です。
まとめ
セキセイインコは人に近い存在である一方、特有の病気にかかりやすい鳥でもあります。
「少しおかしいな」と感じた時に、早めに動物病院を受診することが健康寿命を延ばすポイントです。
著者プロフィール
白井顕治(しらい けんじ)院長
獣医師、医学博士
日本動物病院協会(JAHA)獣医内科認定医・獣医外科認定医・獣医総合臨床認定医
千葉県で代々続く獣医師の家系に生まれ、動物に囲まれて育って、獣医師になりました。「不安をなくす診療」を心がけて診療にあたるとともに、学会参加や後継の育成を行っています。