ハリネズミと病気
ハリネズミは小さな体でとても愛らしい存在ですが、まだ犬や猫に比べると情報が少なく、病気を見逃してしまうこともあります。実際に診療の現場では、病気が進行してから来院するケースも少なくありません。早期発見のためには、飼い主さんの気づきがとても大切です。
ハリネズミに多い病気
ハリネズミでよく見られる病気には、次のようなものがあります。
1. 口や歯の病気
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口腔腫瘍(扁平上皮癌など)
ハリネズミで特に多い病気のひとつ。食欲が落ちる、よだれが増える、口の中にしこりができるといった症状が見られます。
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歯周病や歯折
歯石や不正咬合により歯ぐきが腫れる、出血することがあります。
2. 皮膚の病気
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ダニ寄生(ニダニ症)
針が抜ける、かゆみで体を掻くといった症状が見られます。 -
真菌(カビ)感染
脱毛やかさぶたができることがあり、人に感染する場合もあります。
3. 腫瘍(がん)
ハリネズミは腫瘍の発生率が高い動物として知られています。皮膚、子宮、口の中、消化管など、さまざまな部位で腫瘍が発生します。高齢になるほど発生しやすくなります。
4. 消化器系の病気
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下痢や便秘
食事内容の変化や寄生虫、感染症が原因となります。 -
腸閉塞
異物を飲み込んで腸に詰まることがあります。
5. 神経・運動の病気
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ふらつき症候群(Wobbly Hedgehog Syndrome, WHS)
ハリネズミ特有の神経疾患で、後肢のふらつきから始まり、徐々に全身に広がっていきます。原因は完全には解明されていません。
飼い主さんが気づきやすいサイン
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食欲が落ちている
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体重が減ってきた
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毛や針が抜けている、かゆがっている
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よだれや涙が増えている
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歩き方がおかしい、ふらつく
これらのサインが見られたら、できるだけ早めに受診しましょう。
まとめ
ハリネズミは体が小さいため、ちょっとした変化が大きな病気のサインになっていることがあります。特に腫瘍や口の病気、皮膚の病気は多くみられるため注意が必要です。普段から食欲や体重、毛並みなどを観察し、「おかしいな」と思ったら早めに動物病院にご相談ください。飼い主さんの小さな気づきが、ハリネズミの健康を守る大きな一歩になります。
著者プロフィール
白井顕治(しらい けんじ)院長
獣医師、医学博士
日本動物病院協会(JAHA)獣医内科認定医・獣医外科認定医・獣医総合臨床認定医
千葉県で代々続く獣医師の家系に生まれ、動物に囲まれて育って、獣医師になりました。「不安をなくす診療」を心がけて診療にあたるとともに、学会参加や後継の育成を行っています。