副腎とは
副腎とは、左右の腎臓の両脇にある内分泌組織です。
副腎も左右に1つずつ存在します。
構造として髄質と皮質に分けられ、髄質はカテコールアミン、皮質はステロイド骨格のホルモンを分泌するホルモンです。
副腎に発生することのある腫瘍は?
副腎に発生する腫瘍として、副腎腺腫、副腎腺癌、褐色細胞腫、結節性過形成などが挙げられます。
そのほか、血管肉腫などの肉腫が形成される可能性もあります。
副腎の腫瘍の症状は?
機能性に副腎皮質が腫瘍化した場合にはクッシング症候群としての症状が現れます。
また、猫においては高アルドステロン決勝によって低カリウム血症が生じることによってうなだれるような姿勢やしょこう姿勢が認められることもあります。
非特異的な症状も多いため、体調不良の原因の精査の結果発見されることもあります。
逆に、無症状であり、健康診断やそのほかの疾患の検査の際に偶然発見されることもあります。
副腎の腫瘍の検査は?
副腎の腫瘍に対して、針を刺す細胞診は通常実施しません。報告では、褐色細胞腫と副腎腺腫・副腎腺癌は見分けることができるが、副腎腺腫と副腎腺癌を見分けることが難しいということと、副腎に針を刺入するということ自体が危険性が高いためです。
ただし、それぞれの動物病院や獣医師の考えの上で実施されることもある可能性があります。
多く用いられる診断補助方法として造影を用いたCT撮影があります。
副腎腫瘍は血栓症や、血管内への侵入を起こすこともあるため、CT検査による診断が病状の把握のためにも有用といえます。
副腎の腫瘍の治療方法は?
基本的には副腎自体を切除する副腎切除術の適応となります。
副腎の切除は危険を伴い、施設や報告によりばらつきはありますが、周術期死亡率が15-20%ほどに上ります。そのため、このような危険な手術を実施する必要がある状態なのかどうかという点をきちんと把握してご家族と相談の上手術を行うかどうかを決定する必要があります。
また、術後に一過性に副腎機能低下症(アジソン症)になることもあるため、注意深く周術期のケアを行うことが重要です。
よほど緊急性が高くない限り、通常は大学病院などの基幹病院で行われるべき手術と考えています。
副腎の腫瘍の治療費用は?
上記の腫瘍の中で最も危険性が高い腫瘍は褐色細胞腫といわれています。
どの種類の腫瘍なのかという点と、術中術後の容体、腫瘍の血管内への侵入の有無によって費用が変わってくると考えられます。
副腎の腫瘍が発見されてからの余命は?
腫瘍の種類及び摘出状況によって余命は異なります。
正確な診断は摘出した副腎腫瘍の病理組織検査後となります。
まとめ
副腎の腫瘍は健康診断などで偶発的に発見されることが多いです。そのため、発見後に経過観察を行っていくのか、CTなどの追加検査を実施するのかという点を、エコー増や血管の入り方、のう胞や石灰化の有無、腫瘤の形状から判断して決めていくことが重要となります。
著者プロフィール
白井顕治(しらい けんじ)院長
獣医師、医学博士、日本動物病院協会(JAHA)獣医内科認定医・獣医総合臨床認定医
千葉県で代々続く獣医師の家系に生まれ、動物に囲まれて育って、獣医師になりました。「不安をなくす診療」を心がけて診療にあたるとともに、学会参加や後継の育成を行っています。
当院は国際ねこ医学会(isfm)よりキャットフレンドリーゴールド認定を受けている病院です。