「犬も認知症になるの?」とよく質問を受けます。
この記事では犬の認知症について解説していきます
目次
認知症とは
認知症とは、医学的には脳の疾患や障害によって、認知機能が持続的に低下して、日常生活に支障をきたす状態を指します。
単なる物忘れやろうかとは異なり、記憶や判断力など、複数の認知機能に障害があらわれている状態です。
私が子供のころは、一般市民的には「痴呆・ボケ」と呼ばれていました。
小学生の途中位に、「ボケ」という表現は差別的な意味が多く含まれているため、「認知症」という通称を使いましょうという流れになったように記憶しています。
当時は、認知症という単語がピンときませんでしたが、よく実態を表している好い病名だなと今は感じています。
認知症ってどんな症状?
根本として「認知が正しくできない」ことが全ての始まりです。
お腹がすいていること、喉が渇いていること、話しかけられていること、体のどこかが痛いこと、眠いこと、疲れていること等、自分の体の生命的な信号や、音や振動などの情報の認知機能が低下する場合もあります。
もちろん、程度や進行度などがありますので、一気に完全に進行した状態となることは稀です。
犬で認知症が始まったと感じる症状としては、昼夜の起床リズムのずれや、鳴き方の変化、無目的な歩行、壁に頭をつけてじっとしている、活動性の低下などの症状が認められます。
認知症はどのくらいの速さで進む?
個体差があります。半年~数年で進行していくことが多い印象を受けますが、原因や犬種によっても異なります。
犬が認知症になる年齢は?
およそ12歳を超える老犬において、様々な姿勢異常や認知症が表に出てくることが多いです。
正常な加齢による変化も考慮して判断することが重要です。
認知症になりやすい犬種は?
どの犬種でもなることはありますが、特に日本国内では柴犬及び日本犬系統の雑種に多く認められます。
認知症の治療は?
特異的な治療方法はなく、介護管理やサプリメント、場合によっては鎮静剤やメラトニンなどが試験的に使用されます。
認知症の診断は?
犬の認知症の診断はMRIを撮影してくだされます。実際には年齢もありMRIまで撮影して確定診断を下すことは診療現場では多くありません。
ただし、脳梗塞や脳腫瘍などその他の疾患を除外する目的で検査が重要となることもあるため、見た目の症状だけで確定診断を下すことは避けましょう。
MRIを撮影すると、大脳が委縮し、代償性の水頭症のような状態になっている像が認められます。脳圧の上昇は伴いません。
まとめ
日本犬に多いということからも、犬における認知症は日々遭遇する疾患です。
早期に診断を行い、サプリメントや薬剤で補助を行って経過を観察していき、介護方法などを主治医と相談していくことが重要といえます。
また、飼育状況やご家族様の状況によっては、選択肢の中に安楽死が入ってくる場合もあります。その場合においても、慎重に主治医と相談していきましょう。
著者プロフィール
白井顕治(しらい けんじ)院長
獣医師、医学博士
日本動物病院協会(JAHA)獣医内科認定医・獣医外科認定医・獣医総合臨床認定医
千葉県で代々続く獣医師の家系に生まれ、動物に囲まれて育って、獣医師になりました。「不安をなくす診療」を心がけて診療にあたるとともに、学会参加や後継の育成を行っています。
当院は国際ねこ医学会(isfm)よりキャットフレンドリーゴールド認定を受けている病院です。