現在日本国内で飼育されているワンちゃんの品種として、トイプードルは人気が高く、飼育頭数が非常に多い犬種です。
賢く明るい性格のワンちゃんですが、遺伝的要因や体の構造から、他の犬種と比較して罹患しやすい疾患があります。その中で、主な疾患の症状や予防法について解説します。
膝蓋骨脱臼
いわゆる膝のお皿と表現される骨(膝蓋骨(しつがいこつ))が、内方または外方に脱臼している状況です。特殊な状況では上方にも脱臼することがありますが、まれです。
小型犬特有の骨格構造によって発生しやすいです。症状としては足を引きずったり、スキップするような歩行を呈します。また、膝蓋骨が脱臼した時に破行を呈するため、脱臼が自然に戻ると通常の歩行に戻ります。そのため、通常の歩行と破行が混ざる「間欠的破行」が認められる疾患です。
予防や対策としては、激しいジャンプや、高いところの上り下りの動作を避けるなどがあります。症状によっては手術による整復が必要となります。
進行性網膜萎縮症(PRA)
遺伝性の疾患で、網膜が徐々に機能を失います。視力の低下や失明が起こります。
ミニチュアダックスフンドに発生することがよく知られていますが、その他、チワワやシェルティー、レトリーバーなどにも発生することが知られています。
遺伝子検査を行うことによって発症リスクを把握することができます。発症してしまった場合には、現状では進行を緩徐にする治療や症状を改善させる治療は解明されていないため、生活環境を整えるなどの対症療法を行っていくこととなります。
気管虚脱
気管の構造的な脆弱性によって、気管がつぶれて(虚脱)しまう疾患です。
がーがーというガチョウのような呼吸音や運動後や興奮時の呼吸困難や咳嗽が認められます。
トイプードル以外にも、チワワやポメラニアンなどのほかの小型犬種にもよく認められます。
肥満を避け、首輪ではなくハーネス(胴輪)を利用するなどの対処法が考えられます。
歯周病
チワワやポメラニアンと同様、頭蓋骨が小さく歯が密集しているため、歯垢や歯石が溜まりやすく、その結果として歯周病に罹患しやすい犬種です。
症状としては口臭や歯茎の赤身、出血や硬いものをかむのを嫌がるといった症状が挙げられます。
予防や対策としては、毎日の歯磨きや、動物病院での定期的な歯石除去が挙げられます。
クッシング症候群
副腎皮質ホルモンの過剰分泌によって起こされる内分泌疾患です。こちらの疾患も、トイプードル以外の犬種も罹患します。
症状としては、他院多尿や被毛が薄くなったり、皮膚がかさついたりします。また、腹筋の菲薄化によって腹部の膨張が目立つようになったりもします。
腫瘍性疾患であるため、発生は高齢犬に多く認められます。定期検診を行い早期発見をしていきましょう。
皮膚疾患
アレルギー性皮膚炎(アトピーや食物関連有害反応)、脂腺炎や脂漏症などのフケやべたつきが多くなる疾患が認められます。
症状としてはかゆみや赤み、脱毛やふけが認められます。
動物病院に相談し、かゆみのコントロールや原因の特定を行いましょう。また、スキンケアも有効な予防法・治療法となります。
まとめ
例として、トイプードルに比較的多く認められる疾患を挙げました。そのほかにもてんかん発作や膵炎、外耳炎や糖尿病などが認められることもあります。
どの犬種のワンちゃん全般に言えることですが、定期的な健康診断と、適正体重を目指してバランスのとれた食事を与える事。また、歯磨きや皮膚や耳などの日々のケアを行ってあげることが病気の予防と早期発見に重要といえます。
著者プロフィール
白井顕治(しらい けんじ)院長
獣医師、医学博士
日本動物病院協会(JAHA)獣医内科認定医・獣医外科認定医・獣医総合臨床認定医
千葉県で代々続く獣医師の家系に生まれ、動物に囲まれて育って、獣医師になりました。「不安をなくす診療」を心がけて診療にあたるとともに、学会参加や後継の育成を行っています。
当院は国際ねこ医学会(isfm)よりキャットフレンドリーゴールド認定を受けている病院です。