はじめに
普段一緒に暮らしているわんちゃんやねこちゃんの歩き方が、いつもと違う
ふらふらしている感じがする。そんな時には、整形外科の病気の可能性があります。
この記事では、犬と猫で比較的発生頻度の多い整形外科の病気の紹介をしていきます。
・犬の前足がおかしい
犬において、前足がうまくついていない、前足を挙げているといったような場合に比較的発生頻度の多い整形外科疾患としては、橈尺骨骨折や肩関節脱臼、頸部椎間板ヘルニアや肘関節形成不全があげられます。
骨折については依然と比較して交通事故による骨折が減った一方、「抱っこしていて落としてしまった」や、「自分で椅子から飛び降りてから歩き方がおかしい」といった内容でも骨折が起きていることがよくあります。
【症例:チワワの前腕骨折(橈尺骨骨幹部横骨折)のプレートによる整復】
頸部椎間板ヘルニアに関しては、疾患の原因となっている場所は頸部ですが、症状の一環として前肢の跛行を呈することがあるため、鑑別疾患に上がってきます。比較的よく遭遇する疾患です。変性した椎間板の突出によって脊髄の圧迫・出血・浮腫が起こり、これにより痛みや神経麻痺が生じ破行(びっこ)を呈します。治療は症状の度合いで内科療法、外科療法を選択します。
肘関節形成不全は離断性骨軟骨症、内側鉤状突起分離、肘突起癒合不全、上腕骨内側上顆の不癒合のいづれかを呈したもので、発育期整形外科疾患になります。初期でないと治療はできず慢性期になると外科的対応は困難になってくるので注意が必要です。
・犬の後ろ足がおかしい
犬において、後ろ足の跛行が認められ場合には、膝蓋骨内方脱臼(通称パテラ)、前十字靭帯断裂、股関節脱臼、レッグカルべペルテス病、椎間板ヘルニアなどが鑑別疾患に挙がってきます。
これらの疾患には、犬種特異性、年齢特異性な部分が強いので、経歴が非常に重要となってきます。
レッグカルベペルテス病(無菌性大腿骨頭壊死)は、若齢期に発症するため、多くは1歳以下で発症します。痛みの程度は非常に強く、罹患したほうの足は筋肉が細ってしまっていることが多いです。
【症例:トイプードルの無菌性大腿骨頭壊死(レッグ・カルベ・ペルテス病)】
【症例:トイプードルの無菌性大腿骨頭壊死(レッグ・カルベ・ペルテス病)2】
後肢の問題として発生する腰部椎間板ヘルニアは3-6歳に発生頻度が高いため、0-2歳で後肢の跛行を呈している場合には、鑑別疾患としての順位は下がります。また、ダックスやビーグルのような軟骨異栄養犬種と言われる犬種に発生が多いため、犬種も鑑別疾患の順位に影響する疾患です。
膝蓋骨内方脱臼は小型腫・トイ種のワンちゃんに多く認められる異常です。
膝蓋骨が外側もしくは内側に脱臼やゆるみがある状態で、膝の屈曲・伸展のたびに膝蓋骨が脱臼します。症状の出方としては、「スキップするように走る」「びっこや挙上をするがすぐに元通りに走れる」「寝起きに“のび”をする」などがあります。治療法において手術を選択するかは、症状を見て総合的に判断いたします。
脱臼が認められたらすぐに手術を勧める獣医師もいますが、実際には脱臼の程度や症状の程度に応じて治療法が異なる対応が難しい疾患と言えます。
前十字靭帯断裂は大腿骨と脛骨を繋ぐ靭帯が損傷することで急性の破行(びっこ)を示し、二次性変化によるもの多いです。4歳くらいから前十字靭帯を損傷し始めることがあり、反対足も切れてしまう可能性があります。
・猫の前足がおかしい
猫において前肢の動きがおかしいと感じた際に鑑別疾患に挙がる整形外科疾患として、骨折、肘関節脱臼、肘や手首の変形性関節症、橈骨神経麻痺などがあげられます。
猫ちゃんの前肢に跛行が起こることは整形外科疾患としては比較的稀です。
骨折に関しては、ドアに挟んでしまったり、ベランダなどの高所からの落下によって発生することがあります。
変形性関節症は慢性の進行性、非炎症性の変性性関節疾患になります。加齢性に発症率が高くなり、12歳のネコちゃんでは90%に関節症が認められる問われています。慢性の跛行、運動不耐性、段差に上がれないなどが主だった症状で来院されることが多いです。また、爪が太くなってしまっている子はこれが原因で痛みがあり爪研ぎがうまくできていない可能性があります。
・猫の後ろ足がおかしい
猫の後肢に発生する可能性がある整形外科疾患として、馬尾症候群、大腿骨頭滑り症、前十字靭帯断裂、膝蓋骨内方脱臼が挙げられます。
猫の大腿骨頭滑り症は大腿骨頭の成長板の閉鎖異常により、骨折が起こります。明らかな外傷がなく骨折し、高率で反対足も起こるので注意が必要が必要です。
猫の膝蓋骨内方脱臼の症状の出方としては、腰が下がってガニ股で歩くような歩様を示すことがあります。神経疾患と間違われてしまうこともあります。犬の内方脱臼と比較して痛みが強く跛行が強く出る傾向にあります。
・どこかおかしいがよくわからないけど、おかしい
どこが痛いかがわからない、痛い場所がいまいちわからないけど、変な動き方をしているといった場合には、さまざまな原因が考えられますが、整形外科疾患に限定して挙げるのであれば椎間板ヘルニア、猫の膝蓋骨内方脱臼、多発性関節炎などが考えられます。
これまで病院で経験した事例としては、多発性血栓症で前肢や後肢にその日によって異なる跛行の症状を呈した症例もいますが、まれな疾患です。
まとめ
整形外科疾患は、ほかの診療科と同様
どの動物が(犬・猫)
どんな品種が
どんな年齢で
どこが
いつから
という情報が非常に重要になりますので、ペットの動き方がおかしいな?と感じた場合には、お気軽にご相談ください。
整形外科疾患の診療は千葉県佐倉市の志津・佐倉しらい動物病院へ
著者プロフィール
獣医師 清水健:整形外科担当獣医師
- 小動物整形外科協会(VOA)認定獣医師
- ONE千葉動物整形外科センター 研修生