佐倉しらい動物病院ブログ

【獣医師監修】小型犬の前足に跛行(びっこ)を起こす病気の紹介

はじめに

この記事では、主に体重が10kg以下の小型犬、トイ種のワンちゃんの前足の動き、地面へのつき方がおかしい、「びっこ(跛行)」を引いてしまうような病気について紹介していきます。

跛行が認められる場合には主に整形外科疾患となりますので、整形外科疾患を場所ごとに挙げてから、最後に整形外科以外の疾患の紹介を行います。

・跛行とは

何らかの異常により、正常な歩行ができない状態のことを指します。立ち方がおかしい、立ち上がる時がおかしい、ゆっくり歩く時がおかしい、早く歩くとおかしい、常におかしい、たまにおかしい、長く歩くとおかしくなる、動き始めはおかしいが散歩の後半は普通に歩ける、など、発生するタイミングだけでも様々なパターンが起こりえます。

犬で突然前足にびっこを起こし始めたというようなときには下記の疾患を疑います。

歩き方として、前足が痛い場合には典型的にはヘッドボブと言って、赤べこのように頭を上下に動かしながら歩くのが特徴で、痛い足を接地する際に頭が上がります。

・犬の前足に突然びっこが起こってしまう疾患

ペットの前足にびっこ(跛行)が起こったときに、突然発症したと感じることも多いと思います。

しかし、ペットは以前から痛みを感じていた可能性もあります。通常突然発症する場合には靭帯の断裂や脱臼や骨折、打撲や外傷、異物の刺入などが疑われます。

また、慢性的なびっこ(跛行)の場合には、関節炎や関節の不安定症、靭帯の損傷や筋炎や神経疾患の存在が疑われます。また、まれではありますが頸部~腋窩にかけての部位に腫瘍が存在する場合には圧迫による疼痛の結果としてびっこ(跛行)が出ることもあります。

・指の異常

爪が割れてしまっていたり、折れてしまうと強い痛みを生じます。指の骨も同様で、骨折や靭帯の脱臼が起こった場合には触診による痛みを呈します。

アメリカンショートヘアーの指靭帯断裂

(猫の症例ですが、犬にも起こることがあり得ます)

・手首の異常

手根関節(手首)の脱臼:高いところから落ちるなど外傷で見られることがあります。手首が過伸展したり、歩行時には本来地面に着かないサブパッドが接地するなどの異常が見られます。

・肘の異常

先天的肘関節脱臼:脱臼の程度によっては症状が出ないこともありますが、腕の変形や伸展制限(肘が伸ばせない)などの障害が起こります。

・肩の異常

肩関節脱臼:外傷性の脱臼では跛行は顕著に見られますが、先天性脱臼の場合は症状を強く示さないで、偶発的に見つかることがあります。先天性脱臼の場合は無治療のこともあり、症状が強い場合は手術が必要となることがあります。

・筋肉や神経の異常

橈骨神経麻痺:外傷などで橈骨神経に障害が生じると肘や手首、指を伸ばせなくなるので前肢が丸まったようになり足がうまくつけなくなります。

骨折:ソファや高いところから落ちて橈骨や尺骨の骨折がチワワ、ポメラニアン、トイプードル、イタリアングレーハウンドでは多く見られます。腕が変な方に向いていたり、かなりの痛みを伴います。

・骨折

骨折は、明確に落下や衝突のような大きな衝撃が加わった後に出て、判断しやすい場合もありますが、中には「リードを少し強く引っ張ったら折れた」「家に帰ったら、なぜかびっこをひいていた」などの、ごく弱い力や、中には原因不明で骨折が生じてしまっているケースも存在します。

触診およびレントゲンにて診断を行い、部位や骨折の形状によって治療方法を決めていきます。

ボルゾイの橈尺骨骨折

チワワの橈尺骨骨折

・そのほか

神経根兆候

椎間板ヘルニアや神経鞘腫などで見られることがあり、神経根に炎症や圧迫が起こることで脊髄や末梢神経に刺激が生じ、跛行が見られることがある。静止時に挙上し、歩行や運動時には接地していることが多い。

関節リウマチを含む免疫介在性多発性関節炎

1箇所の関節で起こることも稀にあるが、多くが複数の関節で異常をきたし、関節内に免疫介在性の慢性炎症が原因で、関節痛を引き起こすことがあります。血液検査と関節液の検査などで診断していきます。

著者プロフィール

獣医師 清水健:整形外科担当獣医師

  • 小動物整形外科協会(VOA)認定獣医師
  • ONE千葉動物整形外科センター 研修生

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