犬の正常な排尿回数は?
活動性や飲水量によって変動しますが、一日で排尿(おしっこ)の回数が5ー6回程度であれば正常範囲内であるといってよいと考えられます。
排尿回数が少ない?
ワンちゃんの尿の回数が少なくて心配になることもあると思います。
活動性が低く、水を飲む量も少ない場合には、一日1回、まとめて排尿(おしっこ)をする個体もいます。また、散歩時にしか排尿(おしっこ)をしない性格のワンちゃんであれば、ぎりぎりまで我慢して1日一回、排尿(おしっこ)をするということもあります。
いずれも、同じリズムで生活ができていれば、排尿回数が1回だから病気ということはありません。ただし、尿臭が悪化したり、排尿痛があるような場合には動物病院で検診を実施して、異常が発生していないかどうかチェックをしてもらうとより安心です。
多尿と頻尿、排尿困難の違い
・「多尿」はおしっこの回数が多く、なおかつ一回当たりの排尿量もしっかりと出る症状です。
・「頻尿」は、おしっこの回数が多いが、一回当たりの排尿量が通常より少なくなります。場合によっては、数滴しか出ないのに頑張っていきんだりする症状が頻尿と呼ばれる状態です。トータルの排尿量は、正常な一日の排尿量と比較してそこまで変動しません。
・「排尿困難」は、尿を出したいのに、出口が何らかの理由によって閉塞、競作してしまい、思うように尿が排泄できない状態です。多尿や頻尿と比べると、体外に尿が排出できていないので緊急性が高くなります。
正常だけど排尿回数が多いケース
飼い主様が意図的に水をたくさん飲ませている場合や、塩分の多い食事やおやつを食べている場合には自発的に飲水量が増えるため、排尿回数は多くなります。
この場合には症状は「多尿」ですので、回数が多いし、一回当たりの尿量もしっかりと出ます。
また、雄犬の場合にはマーキングの目的で電柱や街路樹に少量ずつかける個体もいます。この場合には明らかに目的がわかっているということと、排尿回数が増えるのはマーキング時で、家にいるときには行わないので見分けがつきます。また、多くの場合でこのような癖は若いころから変わらないため、これまでどうだったのかというのも重要な判断材料となります。
去勢手術を行った後にも、こういった行為が続く個体もいれば、マーキングをしなくなる個体もいます。
排尿回数が病的に多くなる疾患
犬のおしっこの回数が多くなる「頻尿」を症状として呈する場合には、膀胱~尿道に異常が認められる可能性が高いです。
膀胱炎
特発性、細菌性、結石刺激性など種々の原因で膀胱炎になります。膀胱炎になると頻尿になったり、血尿が出たり、尿臭がきつくなったりします。これらの症状は常に同時に起こるわけでなく、頻尿のみだったり血尿のみだったり、すべて起こすこともあります。
膀胱炎の症例ページへ
結石
膀胱の出口~尿道に結石が詰まってしまうと、排尿がうまくできなくなってしまうため、尿路閉塞による苦しさから何度も排尿姿勢をとることになります。尿を出したくてもうまく出せないというのは緊急性が高い状態ですので、すぐに動物病院に相談しましょう。
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膀胱結石症例ページへ
前立腺や膣の肥大性疾患
オスでは前立腺肥大や前立腺腫瘍、メスでは膣に平滑筋腫などが発生し、物理的に尿道が圧迫されることにより排尿困難の症状を呈します。
結石による尿路閉塞と同様、尿を出したくても出せないというのは緊急性が高い状態ですので、すぐに動物病院へ相談しましょう。
腫瘍性疾患
膀胱や尿道に腫瘍が発生してしまった結果、尿路が閉塞してしまう状況が考えられます。発生する腫瘍の中で有名な腫瘍としては膀胱移行上皮癌や尿道移行上皮癌があげられます。
腫瘍が発生する場所によって頻尿の症状が出ることもあれば、排尿困難の症状が出ることもありますので、エコー検査や細胞診を実施して診断を下す必要があります。
膣に発生した平滑筋腫の症例ページ
治療費用は?
おしっこの回数が多くなった場合の治療費用は、原因によります。
検査には尿検査、尿培養検査やレントゲン検査、エコー検査などが実施される可能性があります。
治療は疾患によって薬による内科療法や食事療法が選択される場合もあれば、外科的な介入が必要な場合には外科入院となります。まずは検査を行って適切に診断を下す必要があります。
まとめ
排尿回数のみで正常・異常を判断するのではなく、いつものその仔と比べておかしいかどうかを見るのが判断するうえで重要となります。
動物病院を受診する際には、よく一緒に散歩に行ってその仔の排尿を見ている人が付き添ってあげると診断の助けになります。また、採取出来たら尿を持参すると検査をスムーズに進めることができますので、タイミングが合えば尿を採取しておきましょう。
著者プロフィール
白井顕治(しらい けんじ)副院長
獣医師、医学博士、日本動物病院協会(JAHA)内科認定医・総合臨床認定医
千葉県で代々続く獣医師の家系に生まれ、動物に囲まれて育って、獣医師になりました。「不安をなくす診療」を心がけて診療にあたるとともに、学会参加や後継の育成を行っています。