目次
はじめに
この記事では骨折に対する整形外科手術の費用について解説していきます。費用の成り立ちや変動する要因などについて解説を実施します。個々の症例の費用を明確に提示することはできませんのでご了承ください。
【誰】の【どこの骨】が【どのように】折れてしまったのか
最も多い骨折は肘から先の前腕や、膝から下の下腿部となりますが、そのほかにも掌の骨、指の骨、上腕、大腿、尾、骨盤、脊椎、顎骨、頭蓋骨なども骨折するリスクはあります。文字通り骨折に関しては「骨」があり、そこに強すぎる衝撃が加わったら折れる可能性があるということです。
どのように折れたというのは、若木骨折、横骨折、斜骨折、粉砕骨折、開放骨折など折れた形状によって名称が変わってきます。
最後に症例の年齢や性格です。若齢のワンちゃんを落としてしまったのか、大型犬が交通事故で車に衝突して折れたのか、リードを引っ張ったら折れてしまったのか。また、正確に関してはおとなしい性格なのか、かなり活発に動いてしまう性格なのか。
また、体にギブスや創外固定などを装着できる性格なのか、そういったものはすぐに暴れて壊してしまう性格なのかということも重要です。
どのような手術を行うのか
以上のことに加え、各動物病院、各獣医師の技術が加味され、治療・手術内容や使用する器具やインプラントが決まります。
費用とはどのような関係があるか?
最も関係があるのはインプラント費用と考えられます。この時に呼称されるインプラントとは、骨を固定するために使用される、ピンやワイヤー、スクリューやプレート等のことを指します。
インプラントを制作する会社にもよりますが、医療用のプレートは1枚1~8万円程度することがあり、スクリューも1本1000~3500円程度するものが多いです。
そのため、固定するのにどのようなインプラントを使用するかというのは、手術費用を大きく左右する要因となりえます。
靭帯断裂に対してインプラントが挿入された症例
手術費用以外に気にするべき費用
ご家族の認識と、動物病院の認識が異なっていると後々問題が生じる原因となってしまいます。骨折の手術の際には
術前検査費用、入院費用、手術費用(別途インプラント費用)、その後の包帯処置
等が必要となり、退院後は定期的なレントゲン検査が必要となることが多いです。
また、犬種やインプラント、骨の癒合の状況によっては、インプラントを除去する手術も実施する必要が出ることもあります。
これまでお話を聞いた動物病院の中には、
「はじめの手術代の中にインプラントを除去する手術代も含めている」
ということを話されている先生や
「インプラントは除去しないこともあるため、除去が必要となった段階でインフォームドコンセントを行う」
という先生もいらっしゃいました。
いずれにせよ、その点について事前にきちんと相談しておくとよいと考えられます。
まとめ
骨折は、【誰】の【どこ骨】が【どのように】折れたのかという点で、同じ症例は一つとしてないといわれるほどバリエーションが存在します。
また、獣医師の技量や好みについても、使い慣れている器具やインプラントが異なるため、「正しい治療方法はなにか?」というよりも、骨折治療の原理原則に則った範囲内で各々の技術で治療ができる治療方法が良いと考えられます。
著者プロフィール
白井顕治(しらい けんじ)院長
獣医師、医学博士、日本動物病院協会(JAHA)内科認定医・総合臨床認定医
千葉県で代々続く獣医師の家系に生まれ、動物に囲まれて育って、獣医師になりました。「不安をなくす診療」を心がけて診療にあたるとともに、学会参加や後継の育成を行っています。
当院は国際ねこ医学会(isfm)よりキャットフレンドリーゴールド認定を受けている病院です。