「手術ができない」の定義
悪性腫瘍の治療に関して、主に
- 1、外科手術
- 2,化学療法(抗がん剤や分子標的薬)
- 3,放射線療法
に分類されます。
この記事内では、「手術ができない」悪性腫瘍(がん・癌)の分類として
- ①そもそも手術が適応ではない悪性腫瘍
- ②本当は手術が第一選択だが、何らかの理由によって手術ができない悪性腫瘍
に分けます。
手術以外の治療が第一選択の悪性腫瘍(がん)
手術や放射線療法は基本的に局所に対する治療方法ですので、全身をめぐるような腫瘍は、化学療法が主な治療方法となります。
具体的には、血液やリンパ液、骨髄の造血系やリンパ球系、白血球系の細胞が腫瘍化したものがあげられます。
良く診断される悪性腫瘍の種類としては、リンパ腫や白血病などです。
もちろん、リンパ腫であっても手術が適応となるケースは存在しますが、その場合においても手術+化学療法となります。
手術が適応外になってしまった悪性腫瘍
これはできた場所やがんの進行度によります。
すでに明確な肺転移や、近隣を含めた遠方のリンパ節まで転移しているような腫瘍においては、根治目的の手術の適応とは言えません。
また、頸部や上顎、脳付近もしくは頭蓋内、脊髄、骨盤などに発生した腫瘍であったり、血管内に浸潤していることがわかっている腫瘍は、形状や浸潤の程度によっては手術によって摘出することが難しい場合もあります。
この場合には、施設や執刀医の技術次第では摘出することが可能となる場合もあるため、近隣の動物病院では手術適応外であったとしても、大学病院などの専門性の高い二次診療施設では手術を行うことができる場合もあります。
一概に腫瘍の種類は言えませんが、進行が早かったり、転移しやすい腫瘍であったり、局所浸潤が強いことがわかっている腫瘍は注意が必要です。
本人の体調が悪い
腫瘍と関連して、もしくは腫瘍によって、深刻な臓器不全(腎不全・肝不全・心不全・呼吸器不全など)があり、麻酔をかけることが困難と判断される場合にも、手術は行わないという判断を下すこともあります。
これは、悪性腫瘍によって亡くなるよりも、手術を行った負担によってより早期になくなる可能性が高いと考えられるような場合にご家族と相談したうえで判断されます。
本当に手術ができないのか?
そもそも手術が適応ではない悪性腫瘍であれば、このような考えは沸いてこないはずですので、手術が必要な悪性腫瘍について記載していきます。
手術ができないほど浸潤、転移しているかをどのように判断したかによって変わってきます。見た目程度やレントゲンや血液検査で判断を行ったのか、リンパ節の細胞診を実施して判断したのか、CTやMRIを撮影して判断したのかなどによるということです。
「進行している」「転移している」という診断も、しっかりとつけるためにはそれなりの検査が必要となってきます。
判断を下すために必要な検査であったり、手術ができないと判断したに至った理由はご家族にしっかりとお伝えする必要があります。
まとめ
手術を行うことができるかどうかは、①悪性腫瘍の種類と、②腫瘍の浸潤や進行度、と③本人の体調によって④動物病院ごとに判断されます。
ペットが手術ができないといわれた場合には、上記のどの理由であったかを考え、その後に受ける治療を決定していくことが重要です。
著者プロフィール
白井顕治(しらい けんじ)院長
獣医師、医学博士、日本動物病院協会(JAHA)内科認定医・総合臨床認定医
千葉県で代々続く獣医師の家系に生まれ、動物に囲まれて育って、獣医師になりました。「不安をなくす診療」を心がけて診療にあたるとともに、学会参加や後継の育成を行っています。
当院は国際ねこ医学会(isfm)よりキャットフレンドリーゴールド認定を受けている病院です。