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涙やけとは
涙やけとは、涙が流れた結果(内眼角から、鼻涙管を通過せずに眼瞼裂からあふれた涙液の流涙)、内眼角周囲の皮膚や被毛に炎症や着色を認める症状のことです。
一般的には、内眼角の被毛が茶褐色に染まることを涙やけと呼称されています。
涙やけはどうしておこる?
唾液や尿、涙などの体液が、被毛についたままになると、茶褐色(赤銅色というか、十円玉のような色)になってしまいます。
そのため、涙やけの部位だけでなく、手先をなめている場合には手先の被毛も茶色くなったり、陰茎・陰部周囲の被毛が茶色くなっている場合があります。
涙やけが起こる原因は?
通常、涙液は、涙腺から分泌され、鼻涙管という管を通じて鼻に排泄されます。
涙液量が過剰に多くなったり、鼻涙管が閉塞してしまったり、鼻涙管に排泄される前に毛細管現象で被毛に吸引されてしまうことによって流涙が発生することになります。
そのため、涙やけがあるというのは症状の一つであり、必ずしも特定の病名を指すわけではありません。
涙液量が多くなるような異常は?
角膜・結膜に異常があるとその刺激によって涙液の分泌が亢進します。角膜・結膜への感染や外傷、ドライアイや腫瘍などによる刺激によって流涙が刺激されます。
鼻涙管が閉塞している?
以前は、涙やけがひどい場合には鼻涙管が閉塞していることが主な理由ではないかと考えられてきましたが、近年の報告においては、鼻涙管閉塞していることは原因として最も多いわけではないということが示唆されています。
ただし、シーズーやチワワ、猫であればエキゾチック種のような短頭種であったり、猫で幼少期にヘルペス性角膜結膜炎がひどく起こった場合には癒着して閉塞している症例もいます。
内眼角の異常?
瞼の内側、鼻側を内眼角と言います。この部位の形成に異常があり、被毛が常に目の中に入ってしまうと、その被毛を伝って毛細管現象で涙が眼外に排泄されてしまいます。
この場合、生まれつきなってしまうこともあれば、成長過程で途中からなってしまうこともあります。
また、中年齢から発生する場合には単に内眼角の異常だけではなく、マイボーム腺機能不全のような涙液膜の強度の低下によって毛細管現象による吸引の力が勝ってしまうことによって発生することもあります。
涙やけの治療とは?
基本的に、流涙した結果に発生してしまうことなので、涙やけを起こしてしまった被毛に対して治療を行うことはなく、流涙を止めることが治療として行われます。
流涙を起こしている原因を特定し、アプローチすることが治療となります。
どの程度、生活に悪影響が出ているか、治したいか、どのような原因でなっているかにもよりますが、治療は通常の点眼治療から、内眼角形成術のような形成外科が必要となることもあります。
食事やサプリによって涙やけが改善するといったことが時折、聞かれますが、通常は考えにくいですが、アレルギー性の眼瞼縁が起きていたり、涙液の性質が改善された場合には起こりえるかもしれません。
(食事を変えたから涙が減るというようなことは通常は起こらないためです。)
涙やけの治療費用は?
涙やけの治療費用は原因によって異なるため、検査を行い原因をある程度特定した後に主治医に質問してみるとよいと考えられます。
まとめ
流涙症(涙やけ)はご家族が見ってもすぐにわかる状況です。
発生している原因は何なのか?どのように治せるのかを考えて治療に当たることが重要といえます。
著者プロフィール
白井顕治(しらい けんじ)院長
獣医師、医学博士
日本動物病院協会(JAHA)獣医内科認定医・獣医外科認定医・獣医総合臨床認定医
千葉県で代々続く獣医師の家系に生まれ、動物に囲まれて育って、獣医師になりました。「不安をなくす診療」を心がけて診療にあたるとともに、学会参加や後継の育成を行っています。
当院は国際ねこ医学会(isfm)よりキャットフレンドリーゴールド認定を受けている病院です。