目次
脾臓とは
脾臓は、ペットの腹腔内の、左側にある臓器で、免疫系の働きや血液を貯蔵する役割などを担っています。
正常な大きさは決まっていませんが、小さめの状態だと左側の肋骨に収まる程度の大きさであることが多いです。
脾臓が大きくなっているかどうかは、主にエコー検査で評価を行います。
評価する場合には、脾臓の長さではなく、厚みで評価することが多いです。厚み以外には脾臓表面の構造や脾門部の脂肪などを用いて評価することもあります。
犬と猫の脾臓に発生する病気
脾臓に発生する腫瘍としては結節性過形成や血管肉腫、間質性肉腫(繊維組織球結節)、肥満細胞腫やリンパ腫、血球貪食性組織球肉腫などがあげられます。
脾臓に腫瘍ができると出る症状
脾臓に腫瘍ができても症状が出ることはあまりありません。
非常に大きくなった場合に、おなかが腫れているという主訴で来院されることが多いです。
そのほか、脾臓の腫瘍が破裂した場合には急な元気消失と食欲不振、起立不能などの症状で来院することがあります。
脾臓にできる腫瘍以外の病気
腫瘍以外の病気として脾うっ血や髄外造血、血腫、骨髄脂肪腫、免疫介在性溶血性貧血や血液寄生虫による脾腫などがあげられます。
脾臓の腫瘍の診断方法
脾臓の腫瘍の診断法としては、画像診断としてレントゲン検査やエコー検査、必要に応じて細胞診やCT検査を行い診断を行います。
最終的な診断は摘出した脾臓を病理組織学的に診断することとなります。
脾臓の腫瘍の治療方法
脾臓の腫瘍の治療には脾臓摘出や化学療法などがあげられます。
多くの場合、脾臓摘出が選択されます。
脾臓を摘出しても大丈夫?
人医療においては、脾臓を摘出することによって感染症に対する抵抗力が低下することが示されていますが、現段階では獣医療ではそういった情報は明らかとなっていません。
その他、脾臓摘出を行うと胃捻転の発生率が高くなることが報告されています。海外では脾臓摘出を行った場合には同時に胃固定も実施する施設もあるようです。
ただし、脾臓腫瘍の場合には胃固定などのほかの操作を行うことによって腫瘍の播種を助長させてしまう可能性があるため、胃捻転の予防として胃固定を実施するのは、
胃捻転の好発である大型犬の脾臓を、脾臓腫瘍以外で摘出した場合であるため、そういった状況に遭遇する確率はあまり高くないといえます。
脾臓の部分摘出は行う?
脾臓の病変が局所的かつ非腫瘍性病変だった場合には脾臓の部分摘出を行う可能性もありますが、発生頻度的には全摘出を実施することがほとんどです。
脾臓の腫瘍の治療費用は?
脾臓の腫瘍の治療方法として、脾臓の摘出後に化学療法を実施することが多いため、費用には
麻酔前検査、診断にかかる費用、脾臓全摘出、病理診断費用、そのほか必要に応じて化学療法の費用が掛かると考えられます。
脾臓に腫瘍ができたときの余命は?
同じ腫瘍であっても、発見時期と選択した治療法によって大きく異なります。
例として、破裂してから発見された脾臓の血管肉腫と、ごく小さいうちに発見して病理検査をしたら血管肉腫だった場合では同じ血管肉腫でもステージが異なるため、予後も異なります。
正確な診断は全摘出後の組織診断となりますので、悪い情報ばかりを見て治療を遅らせることは避けたほうが良いでしょう。
そのため、脾臓に腫瘍があるというだけで、腫瘍の種類が確定していない場合には、犬や猫の脾臓の腫瘍で、手術ぞした場合や手術をしないで経過を観察した場合での余命についての情報は知ることができません。
まとめ
脾臓の腫瘍はあまり症状を出さずに発生するため、発見が遅れることがあります。また、時に健康診断時にエコー検査で発見されることもあります。
発見した場合には主治医に判断を仰ぎ、定期検査や細胞診などの検査を受け、診断を進めて治療に移りましょう。
著者プロフィール
白井顕治(しらい けんじ)院長
獣医師、医学博士、日本動物病院協会(JAHA)獣医内科認定医・獣医総合臨床認定医
千葉県で代々続く獣医師の家系に生まれ、動物に囲まれて育って、獣医師になりました。「不安をなくす診療」を心がけて診療にあたるとともに、学会参加や後継の育成を行っています。
当院は国際ねこ医学会(isfm)よりキャットフレンドリーゴールド認定を受けている病院です。