犬にとってブドウやレーズンは非常に危険であり、中毒を引き起こすことがあります。この記事では、犬のブドウ中毒に関する情報を原因、症状、治療方法、予防法に分けて説明します。
犬のぶどう中毒の原因
ブドウやレーズンに含まれる毒性物質はまだ完全には解明されていません。毒性の発現量は犬の個体差によるため、少量の摂取でも危険です。
特にレーズンは乾燥されているため、毒性が凝縮されており、少量で重篤な症状を引き起こす可能性があります。
皮の部分に多く原因物質が含まれている可能性が示唆されています。
犬のぶどう中毒の症状
ブドウやレーズンを摂取してから6~12時間以内に症状が現れることが多いです。
初期症状として現れる可能性がある症状としては以下の症状が挙げられます。
嘔吐(摂取後数時間以内に見られることが多い)
下痢
食欲不振
元気消失
腹痛
脱水症状
排尿量の減少または排尿停止(急性腎不全の兆候)
振るえ、無気力、失禁
等が挙げられます。
重篤な場合には、急性腎不全や電解質異常などが発生し、生命の危険があることもあります。
犬のブドウの毒性量の目安
個体差が大きいため、摂取量が少なくても注意が必要です。
小型犬の場合、1~2粒でも危険なことがあります。
治療方法
摂取直後(およそ2時間以内で、症状がまだ出ていない場合)の対応としては、催吐によって吐かせることができます。
動物病院に連絡し受診するとともに、どのような形状のブドウまたはレーズンを、どのくらい食べたのかということを調べて受診すると、催吐処置をする際に目安になるので役に立ちます。
催吐剤として、食塩や過酸化水素水(オキシドール)などという情報が書かれている場合もありますが、動物病院では通常、薬剤を注射することによって嘔吐を誘発させます。
オキシドールを飲ませることによって嘔吐をさせた場合には、胃粘膜の炎症が非常に強いため当院では推奨していません。
活性炭の投与:
毒素の吸収を防ぐため活性炭が用いられることがあります。
病院での治療
点滴: 脱水症状を改善し、毒素を早く排出するために実施します。
腎機能のモニタリング: 血液検査で腎臓の状態を評価し、急性じん不全の兆候の有無を確認します。
予防法
予防は単純で、ブドウやレーズンを絶対に与えないようにすることです。ブドウの皮にも毒素が含まれているため、ごみ箱に捨てる際にはワンちゃんが取れないように工夫して廃棄しましょう。また、レーズンパンやパウンドケーキに含まれているものもあるので注意が必要です。
また、食中毒を起こす物品として玉ねぎなどは有名ですが、ブドウについては知られていない場合もあります。家族間でワンちゃんにブドウを与えてはいけないということを周知しておくことも重要といえます。
ブドウ以外の危険な食品:
ブドウ以外の食中毒を起こすことのある食べ物として、チョコレート、キシリトール、タマネギ、ニンニクなども犬にとって有害です。
また、日本ではあまり発生しませんが、エチレングリコールなどの不凍液も腎不全や膵炎を誘発するため注意が必要です。
まとめ
ブドウ中毒は少量でも命に関わる可能性があります。犬が誤って摂取した場合、早急な対応と獣医師の診察が必要です。日頃から食べ物の管理を徹底し、健康を守りましょう。
著者プロフィール
白井顕治(しらい けんじ)院長
獣医師、医学博士
日本動物病院協会(JAHA)獣医内科認定医・獣医外科認定医・獣医総合臨床認定医
千葉県で代々続く獣医師の家系に生まれ、動物に囲まれて育って、獣医師になりました。「不安をなくす診療」を心がけて診療にあたるとともに、学会参加や後継の育成を行っています。
当院は国際ねこ医学会(isfm)よりキャットフレンドリーゴールド認定を受けている病院です。