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眼の周りの名前
眼の周りの名称について、瞼のことを眼瞼(がんけん)と呼びます。上の眼瞼を「上眼瞼(じょうがんけん)」下の眼瞼を「下眼瞼(かがんけん)」と呼びます。「上まぶた・下まぶた」と呼んでも特に差支えはなく、動物病院に伝える際にはどちらの呼び方でも大丈夫です。
また、眼瞼が開いて眼球が見える場所を「眼瞼裂(がんけんれつ)」と呼びます。眼瞼裂の中で、鼻に近いほうを「内眼角」、耳に近いほうを「外眼角」と呼びます。
どこが腫れているか
腫れている場所の分類として眼瞼縁すべてが腫れているのか、一部が腫れているのかという分け方があります。
犬の眼瞼縁がすべてが腫れている場合に考えられる病気
眼瞼(まぶた)すべてが腫れている場合には、アレルギー性炎症や免疫介在性に眼瞼(まぶた)が腫れている可能性が考えられます。
片方(片目)なのか、両方(両目)なのかによって考えられる疾患が異なります。また、受診時に腫れが引いてしまうこともあるので、腫れている状態を写真に記録しておくことも重要です。
よくある主訴として、「目が腫れている」「目の周りが腫れている」「目が開けづらそう」などが挙げられます。
眼瞼の外傷に対する感染によって重度に腫れている症例
犬の眼瞼の一部が腫れている場合に考えられる病気
一部が腫れている場合には眼瞼(まぶた)に腫瘍が発生している可能性が考えられます。
考えられる腫瘍としては、良性腫瘍ではマイボーム腺腫、乳頭腫、犬皮膚組織球腫などがあげられます。悪性腫瘍の場合には肥満細胞腫や扁平上皮癌、メラノーマやリンパ腫などが鑑別にあげられます。
よくある主訴としては、「犬のまぶたが片方腫れている」「まぶたの一部が腫れている」「目の上にふくらみがある」などが挙げられます。
腫瘍性疾患が左右の眼の上下のまぶたに発生している可能性は低いため、一部分のみ腫れている場合には腫瘍の可能性を考えます。
腫瘍以外では外傷による炎症の可能性も考える必要があります。
大型のマイボーム腺腫
眼の近くだが、眼瞼ではない場所が腫れている場合
眼の近くの皮膚が腫れている場合、眼の付近の体表に腫瘍が形成されたという可能性以外には頭蓋骨に由来する腫瘍の可能性や歯牙疾患(根尖周囲膿瘍など)、耳道に起因する炎症性の腫脹が考えられます。
また、瞬膜線という組織が腫脹することによって発生するチェリーアイや、第三眼瞼外反が起こっている場合にも、眼の周りが腫れているという主訴で来院されることがあります。
チェリーアイ症例ページへ
第三眼瞼外反症例ページへ
歯牙疾患によって左顔面が重度に腫脹してしまっている
治療費用は?
眼の周りが腫れてしまっている場合には、まずは検査が必要となります。
眼科検査や細胞診、必要に応じてレントゲン検査やエコー検査を行う可能性もあるかもしれません。
診断後は、疾患によって内服による内科療法を行ったりする場合や、外科的な治療介入が必要となる場合もあります。
まとめ
眼の周囲に腫れているものがある場合には炎症や腫瘍の可能性が考えられます。
眼の周囲の場合、痛みが強く出ることがあります。また、解剖学的に皮膚に余裕がない場所でもあるので、後遺症が発生しないように摘出するためにも小型のうちに対処することが重要な疾患も含まれます。
まずは腫れている原因をきちんと診断して、経過を観察するのか治療を積極的に実施するのかを考えていくことが重要です。
著者プロフィール
白井顕治(しらい けんじ)副院長
獣医師、医学博士、日本動物病院協会(JAHA)内科認定医・総合臨床認定医
千葉県で代々続く獣医師の家系に生まれ、動物に囲まれて育って、獣医師になりました。「不安をなくす診療」を心がけて診療にあたるとともに、学会参加や後継の育成を行っています。