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犬の外耳炎とは?
耳の構造の中で、鼓膜よりも外側を外耳、鼓膜の内側に中耳や内耳があります。外耳炎は何らかの原因によって鼓膜より外側の外耳道に炎症が起こっている状態を指します。
どうして外耳炎になるの?
外耳炎になる原因には、体質的・遺伝的な疾患と、異物や外傷、腫瘍などの局所の問題による外耳炎に分けられます。
体質的・もしくは遺伝的な素因として、アレルギー性皮膚炎・アトピー性皮膚炎や本態性脂漏症によって起こされる場合があります。また、外耳道の形状が体系的な特性として曲がったり狭搾しており、外耳炎を発症しやすい犬種もいます。
局所の問題としては草の種などの異物が入っている場合や、誤った方法で洗浄したり、耳毛を抜いた際の刺激によっておこる外傷性の炎症、そして腫瘍が発生したことによる腫瘍性の炎症や耳垢のターンオーバー阻害による外耳炎があげられます。
その他には、耳ダニなどの寄生虫や、内分泌疾患の症状の一つとして外耳炎を呈している場合もあります。
外耳炎になりやすい犬種は?
アレルギー性皮膚炎をおこしやすい犬種であったり、外耳炎を悪化させやすい素因として、たれ耳だったり、外耳道内の毛が多い個体に外耳炎の発生が良く認められます。
犬の耳の正常な臭いは?
表現が難しいですが、生き物ですので至近距離で外耳のにおいをかいだ場合にも臭いはします。
外耳炎の場合には、細菌やマラセチアが過剰に増殖することが多く、その結果さらに耳垢が産生されるため、においは一般的に強く(臭く感じる)なります。
現在ワンちゃんの耳のにおいをかいで、その臭いを臭いと感じるかどうか、また、病的なのか正常範囲内なのかをネット上の情報で判断することは難しいですが判断基準の手段として
- 反対の耳と比較してどうか
- ずっと同じ臭いだったか、ここ最近変化したか
- 耳垢の量、耳の汚れはどうか
- 本人は耳を気にして痒がったり頭を振ったりしているか
等があげられます。
犬の外耳炎の治療開始の目安
正常~異常だったとしてもごく軽度の状態の目安として、見える範囲の外耳道に発赤が認められたり、ペット本人が耳を痒がるような行為を頻繁に行っているかというのが注目するポイントとなります。
もちろん、外耳炎の原因や症例によっては、外からは見えない鼓膜付近のみが炎症を起こしている場合もあるため、外からの見た目だけでは判断できませんが、あくまで目安としてです。
自宅で耳掃除はした方がいい?
耳道の中に耳垢(みみあか)が見えていて、その見えている耳垢を拭き取ったり、綿棒でちょいっととるような清掃は行って大丈夫です。
綿棒を使用してぐりぐり洗浄したり、洗浄液を外耳道内に入れて洗浄するような行為は、基本的に動物病院で実施すべき処置となります。獣医師によっては自宅で洗浄するようご家族に洗浄液を処方する病院もあるようですが、治療方針の違いだと思います。講演を行うような皮膚科専門医の意見としては、動物病院で獣医師が実施すべきという意見が過半数を占めているように感じています。
外耳炎が治らない?
外耳炎は発生してしまう原因をしっかりと特定し治療を行う必要があります。
治りが悪いと感じる場合には、中には全身麻酔下で外耳道を洗浄し、原因を探索していく場合もあるほどです。「ぴゅーっと耳の中に薬入れればみんな治る」ような病気ではないよということです。もちろん、ごく軽度のものは、少しの治療で良好に維持ができるということもあります。
まとめ
外耳炎と聞くと、ちょっと耳がかゆい病気かな?と感じる方が多いかもしれません。
しかし、外耳炎は放置してしまうと、外耳道の炎症性の構造の変化が生じ、場合によっては全耳道をすべて切除するような大きな手術を受けないといけないような深刻な状況に進行する可能性がある病気です。このような進行した外耳炎はなかなかコントロールすることが難しいため、外耳炎の治療を始める際には、どのくらいの期間がかかりそうかをきちんと話し合ったうえで治療を開始するとよいでしょう。
著者プロフィール
白井顕治(しらい けんじ)院長
獣医師、医学博士、日本動物病院協会(JAHA)内科認定医・総合臨床認定医
千葉県で代々続く獣医師の家系に生まれ、動物に囲まれて育って、獣医師になりました。「不安をなくす診療」を心がけて診療にあたるとともに、学会参加や後継の育成を行っています。
当院は国際ねこ医学会(isfm)よりキャットフレンドリーゴールド認定を受けている病院です。