佐倉しらい動物病院ブログ

【獣医師監修】犬の骨盤膀胱について解説

犬の膀胱の正常な位置は?

膀胱は腹腔内の尾側腹側に位置する場所にあるのが正常です。

正常な膀胱のエコー像(赤く囲った位置が膀胱→尿道への尿路)

正常な膀胱のCT像

骨盤腔とは?

骨盤を形成する骨(仙骨・腸骨・恥骨・坐骨)に囲まれた空間で、一部は腹腔と連続しています。

犬の骨盤膀胱(骨盤部膀胱)とは

骨盤膀胱(骨盤部膀胱)は膀胱が骨盤腔内に入ってしまっている状態のことを指します。

骨盤膀胱をおこしやすい犬の品種や性別は?

統計的には、雌のトイプードルに多いといわれていますが、雌雄と問わず、また、フラットコーテットレトリバーのような大型犬にも発生が認められます。

犬の骨盤膀胱の診断法とは

レントゲン検査や超音波検査、CT検査などの画像診断検査を実施した際に偶発的に発見されることが最も多いです。

骨盤膀胱が認められるトイプードルのエコー所見

尿道の出口が正常と比較して背側(画像下側)に変異している

骨盤膀胱が認められるCT像

骨盤膀胱に対して治療や処置は必要になるのか?

通常、骨盤膀胱は臨床的意義は低いため、所見としてコメントは出ますが、特に症状を出す異常ではないことが多いため、治療は実施しません。

ただし、膀胱が折れ曲がってしまうことによって排尿困難を呈するような重度の骨盤膀胱に対しては、膀胱の腹壁固定を実施することがあります。

折れ曲がってしまって排尿困難を呈しているかどうかは、造影検査や透視検査を用いて診断されます。このような所見・症状がなければ、通常は骨盤膀胱に対して腹壁固定は実施しません。

排尿に異常があっても、骨盤膀胱が関与していない場合には骨盤膀胱に対して治療は実施しません。

高齢になってから発見した場合、尿道開口部が隆起することがあり、腫瘍と見間違える可能性があるため鑑別疾患として留意しておく必要があります。

著者プロフィール

白井顕治(しらい けんじ)院長

獣医師、医学博士、日本動物病院協会(JAHA)内科認定医・総合臨床認定医

千葉県で代々続く獣医師の家系に生まれ、動物に囲まれて育って、獣医師になりました。「不安をなくす診療」を心がけて診療にあたるとともに、学会参加や後継の育成を行っています。

当院は国際ねこ医学会(isfm)よりキャットフレンドリーゴールド認定を受けている病院です。

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