正常な被毛と比較して、薄毛になっている状態の原因について解説していきます。
発毛の周期自体に異常がある
顕微鏡で毛根を確認することによって発毛周期を観察することができます。発毛周期に異常が認められる場合には、ホルモン性脱毛と、脱毛症x(アロペシアX)などが考えられます。
ホルモン性脱毛には性ホルモンや甲状腺ホルモン、副腎皮質ホルモンが関与している可能性が考えられます。
発毛の周期には異常がない
発毛周期に異常がない場合では、被毛は正常に生えてきているが、何らかの原因によって毛が抜けてしまったり、折れてしまったりすることによって見た目の毛が薄い状態といえます。
感染性の毛包炎
脱毛が生じているので、基本的には毛包に異常が生じている可能性が考えられます。毛包限定に炎症が起きることもあれば、表皮全域に炎症が生じ、結果として毛包にも炎症が波及した可能性も考えられます。
感染性の原因としては、細菌や真菌(カビ)、寄生虫などが考えられます。
細菌による表在性膿皮症
寄生虫であるニキビダニによる毛包炎による脱毛
炎症性
化学物質や接触性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎や免疫介在性皮膚炎などの炎症が毛包に波及していくと、脱毛が起きる可能性があります。
物理的な刺激
首輪やハーネスなどによる持続的な刺激や、かゆみによる掻把によって、部分的に脱毛(折れ毛)が生じることがあります。
その他の脱毛症
淡色被毛脱毛症や黒色被毛脱毛症のように、毛軸の中に入り込むメラニンの量が不均一になってしまうことによって毛が折れてしまう疾患も存在します。その場合、特定の色の被毛の部分だけ脱毛が生じます。
パターン脱毛症のように、耳や前胸部などの限局した部分に非炎症性の脱毛を認める疾患も存在します。
ミニチュアピンシャーのパターン脱毛
まとめ
犬の体の表面の毛は様々な理由で抜けたり折れたりします。犬種・性別・年齢・飼育方法に加え、既往歴や脱毛部位、脱毛期間などが診断に重要な情報となります。
脱毛症の初診として動物病院を受診する際は、1週間ほどシャンプーや塗り薬は使用せずに行くと、検査がスムーズに行えることが多いですので、ホームドクターに指示を仰いで受診しましょう。
著者プロフィール
白井顕治(しらい けんじ)院長
獣医師、医学博士、日本動物病院協会(JAHA)内科認定医・総合臨床認定医
千葉県で代々続く獣医師の家系に生まれ、動物に囲まれて育って、獣医師になりました。「不安をなくす診療」を心がけて診療にあたるとともに、学会参加や後継の育成を行っています。
当院は国際ねこ医学会(isfm)よりキャットフレンドリーゴールド認定を受けている病院です。