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セキセイインコについて
セキセイインコは日本で最もポピュラーなペット鳥のひとつです。体重はおおよそ 30〜40g前後。活発で人懐こく、声やしぐさも多彩で飼い主さんを楽しませてくれます。
平均寿命は7〜10年程度ですが、飼育環境や健康管理によってはさらに長生きする個体もいます。
普段からよく動き、よく食べる鳥種なので、食欲や排泄の異常は比較的早く気づかれるサインです。
セキセイインコが嘔吐や下痢をする症状について
セキセイインコが吐いてしまうとき、しばしば 頭の羽毛や周囲の床が汚れる のが特徴です。食べた餌や液体が口から出てくるため、顔や嘴の周囲が濡れていたら注意が必要です。
また、下痢では便が水っぽくなったり、色が変化したりします。正常な便は固形部分(糞)と白い尿酸、透明な尿の3層に分かれますが、下痢のときはこれが混ざり合ってしまうことがあります。
嘔吐や下痢があっても生理的な場合
すべての吐き戻しや軟便が病気とは限りません。
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発情期の吐き戻し:お気に入りのおもちゃや飼い主に餌を与えるように吐き戻す行動。
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一時的な軟便:環境の変化や緊張、換羽などで一過性に軟らかい便が出ることがあります。
ただし、症状が長く続く場合や元気がない場合は病気の可能性が高いため注意が必要です。
病的な嘔吐や下痢の種類や病気
病気が原因の場合、以下のような疾患が考えられます。
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そのう炎(細菌・真菌):未消化の餌を吐く、口臭、食欲低下。
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トリコモナス症:黄色っぽい吐き戻し、口内炎症。
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腸炎(細菌性・寄生虫性):水様性下痢、元気消失。
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マイコプラズマや呼吸器感染:嘔吐とともに呼吸異常を伴うことがある。
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腫瘍や内臓疾患:高齢個体では慢性的な下痢や体重減少。
緑色便を呈しているセキセイインコ
診断するための検査について
動物病院では次のような検査を行います。
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身体検査・体重測定:体重の変化は重要な指標。
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口腔内・そのう検査:直接採取し、顕微鏡で細菌・真菌・原虫を確認。
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糞便検査:寄生虫や細菌感染を調べます。
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レントゲン検査:そのうや消化管の異常、腫瘍の有無を確認。
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血液検査(必要に応じて):全身状態の把握に有効。
まとめ
セキセイインコの嘔吐や下痢は、発情期の吐き戻しや一時的な軟便のように生理的なこともありますが、そのう炎や腸炎など重い病気のサインである場合も少なくありません。
「少し様子を見よう」としているうちに症状が急速に悪化することもあります。顔や嘴の汚れ、便の異常に気づいたら、できるだけ早めに動物病院での診察を受けましょう。
著者プロフィール
白井顕治(しらい けんじ)院長
獣医師、医学博士
日本動物病院協会(JAHA)獣医内科認定医・獣医外科認定医・獣医総合臨床認定医
千葉県で代々続く獣医師の家系に生まれ、動物に囲まれて育って、獣医師になりました。「不安をなくす診療」を心がけて診療にあたるとともに、学会参加や後継の育成を行っています。