
目次
**モルモットの膀胱結石について
(疫学・症状・検査・治療まで)**
モルモットは、小動物の中でも特に膀胱結石が多い動物です。
結石ができやすい体質に加え、食事や飼育環境も影響するため、
多くのモルモットが生涯で一度は膀胱結石を経験します。
ここでは、モルモットの膀胱結石について、発生の背景から治療方法まで分かりやすくまとめます。
1. 疫学(どれくらい多いの?)
モルモットの膀胱結石は 非常に発生頻度の高い疾患 で、実臨床では以下の傾向が見られます。
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来院したモルモットの10〜20%に結石歴がある
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排尿トラブルで受診したモルモットの30〜50%が結石が原因
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3歳以上の高齢個体で発生率が急上昇
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再発率も30〜60%と高い
体質的に
「尿中にカルシウムが多く出る=石ができやすい」
という特徴があり、慢性化・再発しやすい病気です。
2. 症状(どんなサインが出る?)
膀胱結石の症状は以下のように進行します。
🟧 初期
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排尿姿勢が長い
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尿がにおう
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便秘気味に見える
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軽度の血尿
🟥 中等度
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はっきりした血尿
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排尿時に鳴く
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尿の量が減る
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動きたがらない
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食欲が落ちる
🩸 尿道閉塞(緊急症状)
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完全に尿が出ない
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腹部膨満
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強い痛み
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ショック状態・虚脱
結石が尿道で詰まると 命に関わる緊急疾患 となります。
3. なぜこんなに結石が多いの?(発生要因)
モルモットに結石が多い理由は、以下の体質+生活環境によるものです。
⭐ 体質的要因(最も大きい)
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尿中カルシウム排泄量が非常に多い(高カルシウム尿)
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腸でカルシウムを吸収しやすい体質
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尿がアルカリ性で結石が形成されやすい
⭐ 食事要因
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アルファルファ主体のフード
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高カルシウム牧草
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野菜のバランス不良
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水分摂取不足
⭐ その他の要因
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肥満
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運動不足
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尿路感染症
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高齢による排尿力低下
これらが組み合わさり、
結石→炎症→再発という悪循環が起きやすくなります。
4. 検査方法
膀胱結石の診断は比較的容易で、以下の検査が使われます。
🟩 ① X線検査(レントゲン)※最も有用
ほとんどのモルモットの結石は
X線で非常に明瞭に写ります(高カルシウム石)。
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結石の大きさ
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数
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位置(膀胱・尿道・腎臓など)
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尿道閉塞の有無
が短時間で判断できます。
🟦 ② 超音波検査(エコー)
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膀胱炎の有無
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粘膜の肥厚
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少量の砂状結晶
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尿漏れ
など、レントゲンで見えない“炎症評価”に有用。
🟧 ③ 尿検査
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血尿の評価
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感染の有無
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pH
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白血球の有無
膀胱炎の併発が多いため、重要な検査です。
5. 治療方法
結石の 位置・大きさ・尿道閉塞の有無により治療が大きく変わります。
🟥 ① 外科手術(膀胱切開による摘出)
膀胱内の石が大きい場合の標準治療です。
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全身麻酔で膀胱を開けて石を摘出
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成功率は高い
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術後は再発防止が重要
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再発率は30〜60%
一般的なハムスターや小鳥より体格があるため、
比較的、手術は実施しやすい部類です。
🟦 ② 尿道閉塞時の処置(緊急処置)
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カテーテルで閉塞部位を解除
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石を後ろに戻す(膀胱へ戻して後日手術)
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麻酔下での尿道内摘出
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膀胱内容の洗浄
尿道詰まり摘出 は、命を救う緊急治療です。

🟩 ③ 内科治療(結石予防・症状緩和)
結石を溶かす薬はありませんが、以下で再発予防を行います。
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抗生剤(膀胱炎の併発時)
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鎮痛剤
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食事管理(低Caフード)
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水分補給・飲水量の調整
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適度な運動
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体重管理
結石が非常に小さい場合は、
排出を促す治療を組み合わせることで自然排出が期待できるケースもあります。
6. 再発予防について
再発率が高いため、治療後がとても重要です。
✔ 食事の見直し
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チモシーを主体に
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高Caの野菜・おやつを控える
✔ 飲水量の確保
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給水器より皿水の方が飲む個体もいる
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水分量の多い野菜を適度に使用
✔ 排尿しやすい環境
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床材の深さや段差
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運動量の確保
✔ 早期受診
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血尿
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排尿姿勢の変化
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食欲低下
→再発の初期サイン
7. まとめ
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モルモットは結石が非常に多い動物
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高カルシウム尿体質が原因で、3歳以上で発生率が上昇
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症状は 血尿・排尿困難・痛み
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診断はレントゲンが最も有用
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大きい結石は手術が標準治療
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尿道閉塞は緊急疾患で、即時の処置が必須
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再発率は高いため、治療後の管理が重要
著者プロフィール

白井顕治(しらい けんじ)院長
獣医師、医学博士
日本動物病院協会(JAHA)獣医内科認定医・獣医外科認定医・獣医総合臨床認定医
千葉県で代々続く獣医師の家系に生まれ、動物に囲まれて育って、獣医師になりました。「不安をなくす診療」を心がけて診療にあたるとともに、学会参加や後継の育成を行っています。
当院は国際ねこ医学会(isfm)よりキャットフレンドリーゴールド認定を受けている病院です。
