佐倉しらい動物病院ブログ

後ろ足を挙げている?犬の前十字靭帯の断裂について解説

犬の膝関節について

犬の膝関節(後肢膝関節)は、大腿骨・脛骨・膝蓋骨(お皿の骨)から構成され、複雑な動きを支えています。関節の中には「前十字靭帯」「後十字靭帯」という靭帯があり、関節が安定して動けるように働いています。

パピヨンの前十字靭帯断裂
前十字靭帯は膝の関節の安定性に関与している靭帯で、この靭帯が損傷を受けることを状態によって前十字靭帯の部分断裂や完全断裂と呼ぶ。前十字靭帯断...

前十字靭帯について

前十字靭帯は、膝関節の中で最も重要な靭帯のひとつです。脛骨が前方へずれるのを防ぎ、膝関節を安定させています。人間のスポーツ障害でもよく知られている靭帯ですが、犬でも断裂が起こりやすい部位です。

前十字靭帯断裂の原因

犬の前十字靭帯断裂は、人間のようなスポーツによる急性損傷だけでなく、加齢や体重、靭帯そのものの弱さが関係していると考えられています。

  • 急なジャンプや方向転換

  • 肥満による膝への負担

  • 年齢による靭帯の変性

  • 遺伝的な要因

これらが複合的に関与して、断裂につながります。

両側性と片側性断裂の割合

最初は片側の膝だけに起こることが多いですが、時間が経つと反対側の膝にも発生するケースが多く報告されています。50%以上の犬が将来的に両側性になるといわれており、注意が必要です。

なりやすい犬種や年齢、性別はある?

  • 犬種:ラブラドール・レトリーバー、ゴールデン・レトリーバー、ロットワイラーなどの大型犬に多く見られますが、小型犬でも発生します。

  • 年齢:中高齢の犬で多いですが、若い犬でも発症することがあります。

  • 性別:雌にやや多いとされます。

チワワ(5.3kg)の前十字靭帯断裂に対するTPLO手術(脛骨高平部水平化術)
犬の前十字靭帯断裂(cranial cruciate ligament rupture, CCLR)は、膝関節内で大腿骨と脛骨を安定させる重...

ミックス犬(5.0kg)の前十字靭帯断裂に対するTPLO術(脛骨高平部水平化骨切術)
当院では、前十字靭帯断裂に対してすべての症例で**TPLO法(脛骨高平部水平化骨切り術)**を採用しています。この手術は、脛骨の角度を調整し...

柴犬(16.5kg)の前十字靭帯断裂に対するTPLO術(脛骨高平部水平化骨切術)
前十字靭帯断裂の手術にはいくつかの方法がありますが、**機能回復の点で最も優れているとされるのがTPLO(脛骨高平部水平化骨切り術)**です...

雑種犬(20kg)の前十字靭帯断裂に対するTPLO術(脛骨高平部水平化骨切術)
前十字靭帯断裂は、年齢に関係なく治療を検討すべき疾患です。特に高齢犬では、「もう年だから…」と様子を見ているうちに関節炎が進行し、慢性的な痛...

前十字靭帯断裂に対する外科療法の種類

保存療法(安静や投薬)では根本的な解決が難しいため、外科手術が標準的な治療となります。代表的な術式には次のようなものがあります。

  • TPLO(脛骨高平部水平化骨切り術)

  • TTA(脛骨粗面前進術)

  • 関節外法(人工靭帯を用いる方法)

犬の体格やライフスタイルに合わせて選択されます。

当院で実施しているTPLOについて解説

当院では、前十字靭帯断裂症例に対してTPLOを積極的に行っています。TPLOは脛骨の角度を外科的に調整することで、前十字靭帯がなくても関節を安定させる手術です。術後の安定性が高く、再発が少ないのが特徴です。

チワワの前十字靭帯断裂に対するTPLO(脛骨高平部水平化骨切術)
前十字靭帯は後肢の膝関節内にある靭帯で、太ももの大腿骨と脛の脛骨を結んでいる靭帯です。前十字靭帯の損傷(部分断裂や完全断裂)は小型犬から大型...

TPLOの合併症は?

手術に伴う合併症としては、以下のようなものがあります。

  • 感染(まれですが注意が必要)

  • インプラント(プレートやスクリュー)の緩み

  • 骨の癒合遅延

  • 一時的な跛行や腫れ

適切な管理と術後リハビリで、多くは問題なく回復します。

前十字靭帯断裂の手術費用は?

犬の体格や状態、必要な入院日数によって費用は変動しますが、概ね40〜55万円前後が目安となります。手術費用は各病院によって異なるため、参考にとどめていただき、詳細は執刀される動物病院へ確認をお願いいたします。

かかる可能性がある費用の内訳としては手術費用や麻酔費用、インプラント代などが含まれますが、検査費用・入院費・術後の再診費用を含めると総額はもう少しかかる場合もあります。

まとめ

犬が後ろ足を挙げて歩く、びっこを引くといった症状は、前十字靭帯断裂の可能性があります。放置すると関節炎が進行し、慢性的な痛みを引き起こすため、早期に診断・治療を行うことが大切です。当院ではTPLOを中心とした手術治療を行っており、術後のリハビリや生活指導までサポートいたします。愛犬が元気に歩ける毎日のために、気になる症状があれば早めにご相談ください。

著者プロフィール

白井顕治(しらい けんじ)院長

獣医師、医学博士

日本動物病院協会(JAHA)獣医内科認定医・獣医外科認定医・獣医総合臨床認定医

千葉県で代々続く獣医師の家系に生まれ、動物に囲まれて育って、獣医師になりました。「不安をなくす診療」を心がけて診療にあたるとともに、学会参加や後継の育成を行っています。

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