目次
Q1. 前十字靭帯断裂とは何ですか?
前十字靭帯断裂(CCL断裂)は、犬の膝関節内にある靭帯が切れてしまう疾患です。
靭帯が断裂すると、関節が不安定になり、後ろ足をかばうような歩き方(跛行)が見られます。
とくに中〜大型犬や活発な犬に多いですが、小型犬にも起こることがあります。
Q2. どんな症状が見られますか?
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急に後ろ足をつかなくなった
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びっこを引いて歩く
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立ち上がる時に痛そうにする
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階段を嫌がる
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動きたがらない
などの症状が一般的です。
慢性型の場合は、症状が少しずつ進行していくこともあります。
Q3. 手術をしないとどうなりますか?
靭帯が断裂したまま放置すると、関節の不安定さが持続し、二次的に関節炎が進行していきます。
一時的に痛みが落ち着いても、跛行が残ったり、反対脚にも負担がかかって断裂するリスクが高まります。
また、体重が重い犬ほど進行は早い傾向があります。
報告によって違いがありますが、約半数のワンちゃんが両側の断裂を起こすといわれています。
Q4. 手術方法にはどんなものがありますか?
犬の体格や活動性に応じて術式を選択します。代表的なものは:
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TPLO法(脛骨高平部水平化骨切り術)
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TTA法(脛骨粗面前進化術)
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関節外固定法
それぞれに利点・適応があります。診察で適切な方法を判断します。
当院では基本的にTPLO法によって手術を実施しています。
Q5. 手術費用はどのくらいですか?
犬の体格・手術方法・入院日数などによって異なりますが、目安として45~55万円程度です。
上記金額に入るもの・入らないものなど、詳しくは診察時にご説明いたします。
Q6. 手術のタイミングはいつが良いですか?
明確な跛行が見られる場合や膝の不安定性がある場合は、できるだけ早めの手術が望ましいとされています。
早期に手術することで、術後のリハビリ期間が短くなり、関節炎の進行も抑えることができます。
Q7. 何歳まで手術が可能ですか?
年齢だけで可否が決まるわけではありません。
全身状態が良好であれば、高齢犬でも手術可能な場合があります。
事前に血液検査・レントゲン・心臓評価などを行い、安全性を確認します。
11歳
Q8. 術後の回復までどれくらいかかりますか?
多くの犬で、術後数日で足をつくようになり、1〜2か月程度で歩行回復が見込めます。
完全な安定化には数か月を要するため、リハビリと安静管理が重要です。
ただし、回復には個体差があるため、症例の性格や手術までの時間、術後の過ごし方や手術による合併症の有無によっても結果は変わってきます。
術後数日の検診時
Q9. リハビリは必要ですか?
はい、必要です。
術後の適切なリハビリ(歩行訓練、ストレッチなど)によって、筋力と関節可動域の回復がスムーズになります。
必要に応じてリハビリのプランをご提案しています。
Q10. 予防はできますか?
完全に予防することは難しいですが、
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適正体重の維持
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激しいジャンプや急停止の制限
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適度な筋力トレーニング
でリスクを減らすことができます。
Q11. ここの動物病院で前十字靭帯断裂の手術できる?
当院では基本的に前十字靭帯断裂に対する外科手術を自院にて実施しております。
執刀は院長となります。
ご相談はお電話または受付までどうぞ。
手術は中志津本院でのみ実施しますが、事前の診断や術前検査、ご相談はどちらの病院でも受け付けております。お気軽にご相談ください。
著者プロフィール
白井顕治(しらい けんじ)院長
獣医師、医学博士
日本動物病院協会(JAHA)獣医内科認定医・獣医外科認定医・獣医総合臨床認定医
千葉県で代々続く獣医師の家系に生まれ、動物に囲まれて育って、獣医師になりました。「不安をなくす診療」を心がけて診療にあたるとともに、学会参加や後継の育成を行っています。