こんにちは、獣医師の白井顕治です。
ペットの体をなでていたら、なんだか「ぽこ」っと腫れているな…。と気づくときがあると思います。
また、トリミングに行った際に、トリマーさんに「ここにできものがありますよ」と教えてもらうことで気づくこともあると思います。
そのような場合、飼い主様は動物病院に診察にいらっしゃるわけですが、その時の流れについてこの記事で解説していきたいと思います。
体にできたできもので、検査を行っていないものは医学的には「腫瘤(しゅりゅう)」と呼びます。コブですね。
そして検査を行った結果、良性もしくは悪性の腫瘍と診断されたものについては「腫瘍」という言葉を使います。
なので、皆様が自宅もしくはトリミングで発見した段階を正確に言い表すと
「ペットの体表に腫瘤を見つけた」ということになります(体表ではなく、体内の場合には院内の検査で発見されることが多いので)
この腫瘤には、大きく分けて3つの可能性があります。
1、腫瘍ではない
2、良性腫瘍
3、悪性腫瘍
の3通りですね。
1、の腫瘍ではないケースについて、水が溜まっていたり、角化物(垢)が貯留していたり感染や自己免疫性に炎症を起こしている場合などがあげられます。
2、では、過誤腫や脂肪腫、乳腺腫、皮膚組織球腫などがあげられます。
3、では、軟部組織肉腫や肥満細胞腫、悪性黒色腫、肛門周囲腺癌、乳腺癌、アポクリン腺癌、リンパ腫などがあげられます。
上記の3つは、通常、出来た場所や外見、軟らかさや動くかどうかなどでは判断することができません。また、一言に「良性腫瘍」、「悪性腫瘍」といっても、その判別まで行うことはできません。
そこで今回の記事の本題となりますが、腫瘤の診断のためにはまず針吸引生検(FNA)を行います。
病院によって方針に違いもありますが、当院ではFNAを行ってえられた細胞を専門の診断センターへ提出し、診断して頂きます。
郵送や診断にかかる時間として、およそ7~10日以内には結果が出ます。
ここで診断がくだった場合には、それぞれの診断名に従って治療内容を決定していきます。
希に、FNAでは診断することができない場合もあります。
そのような場合で、悪性腫瘍の可能性が高い場合には、FNAで行った細胞診ではなく、腫瘤組織をブロックで採取してくる生検を行う必要があります。
その場合、腫瘤の場所にもよりますが、局所麻酔や鎮静を行い、腫瘍組織の一部もしくは全部を採取し、病理組織診断を行います。
その診断を行った結果、良性か悪性か、また、腫瘍の種類を診断し、追加での治療プランを決定します。
腫瘍の治療がうまくいくかどうかは、治療を開始する前にしっかりと診断できていたかということに大きく左右されます。
系統だてて診断と治療を行っていきましょう。