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飼育鳥のメガバクテリア(マクロラブダス)について
メガバクテリアは、飼い鳥、とくにセキセイインコでよく見られる“胃の病気”です。
名前に「バクテリア」とつきますが、実際には
細菌ではなく「糸状の真菌(カビ)」 に分類されます。
正式名称は
🔹 Macrorhabdus ornithogaster(マクロラブダス)
といい、鳥の胃(腺胃)に感染し、胃の働きを悪くすることでさまざまな症状を引き起こします。
1. メガバクテリアとは?
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鳥の 腺胃(前胃)〜筋胃の境目 に定着する真菌
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形が長い棒状のため、顕微鏡で長い線のように見える
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消化を邪魔し、体重が落ちていく
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ストレスや免疫低下で悪化しやすい
メガバクテリア単体では軽症でも、
他の病気と併発することで重症化することが特徴です。
2. 鳥種による感受性の違い
メガバクテリアは どの鳥種にも感染し得ます が、特に多いのは次の鳥種です。
🟩 かかりやすい鳥種
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セキセイインコ(圧倒的に多い)
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オカメインコ
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ラブバード(コザクラ・ボタン)
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文鳥
🟦 比較的まれだが発生する鳥種
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カナリア
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フィンチ類
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中型インコ類
特に セキセイインコは感受性が非常に高く、
幼鳥期から長く保菌しているケースもあります。
3. 主な症状
メガバクテリアは胃の働きを弱らせるため、消化器症状が中心です。
🟥 よく見られる症状
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体重が落ちる(痩せてくる)
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食欲はあるのに太れない
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嘔吐
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未消化の餌が便に混じる
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下痢または軟便
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元気がない
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羽毛が膨らむ(具合悪そうに見える)
🟧 進行すると
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急激な体重低下
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衰弱
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脱水
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便が酸っぱい臭い
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低血糖を起こすことも
慢性進行と急性悪化を繰り返すことも多い病気です。
4. 駆除できる? 再発する?
✔ 完全駆除は可能なケースもある
適切な治療を行えば、
体内からメガバクテリアが検出されなくなるケースはあります。
✔ ただし、“再発の多い病気” であることがポイント
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ストレス
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発情
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他の病気
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飼育環境の変化
これらをきっかけに 再増殖 → 再発 することがあります。
✔ 慢性保菌タイプも存在する
症状は出ないが体内には少量残る“キャリア”もおり、
免疫低下時に発症することがあります。
5. 常在細菌叢に含まれるの?
結論:
🔸 本来の正常な腸内細菌叢には含まれません。
ただし——
少数が腺胃に存在していても症状が出ない個体もいます。
つまり
「正常ではないが、少量なら共存してしまう」
という扱いが最も正確です。
6. 検査方法
当院では、
🎯 もっとも確実性が高い“直接顕微鏡観察”を基本にしています。
🟩 ① 直接顕微鏡検査(第一選択)
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便を直接スライドに載せて観察
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メガバクテリアは特徴的な棒状形態ですぐ分かる
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その場で診断できる
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コストが低い
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“生きた状態で”見えるため敏感
→ 最も信頼性が高く、実臨床で最も役立つ検査
🟦 ② PCR検査(外部検査)
メリット
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遺伝子レベルで検出できる
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微量でも検出可能
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顕微鏡で見えないレベルでも陽性になることがある
デメリット
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陽性=症状が出るとは限らない
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治療後でもしばらく陽性が続くことがある
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死菌(死んだ真菌)でも陽性になる可能性
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コスト・時間がかかる
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臨床症状との整合性を判断する必要がある
→ 補助的検査 としての位置づけが最適
7. 治療方法(簡潔版)
治療は鳥の状態により異なりますが、
当院では以下の方法を組み合わせて行います(詳細は省略)。
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メガバクテリアの増殖を抑える薬剤
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胃腸の働きを助けるケア
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電解質・水分の補助
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栄養状態の改善
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再発を防ぐ生活管理
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二次感染への対策
鳥の体重・症状に合わせて治療内容を調整することが重要です。
8. まとめ
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メガバクテリアは“腺胃を中心に感染する真菌”で、セキセイインコに多い
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主な症状は 体重減少・嘔吐・未消化便・元気消失
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駆除できる場合もあるが、再発しやすい 病気
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常在菌ではないが、少量なら無症状で存在する個体もいる
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検査は 直接顕微鏡が最も信頼性が高い
PCRは補助的な役割 -
治療はその子に合わせて複合的に行い、再発防止が大切
著者プロフィール

白井顕治(しらい けんじ)院長
獣医師、医学博士
日本動物病院協会(JAHA)獣医内科認定医・獣医外科認定医・獣医総合臨床認定医
千葉県で代々続く獣医師の家系に生まれ、動物に囲まれて育って、獣医師になりました。「不安をなくす診療」を心がけて診療にあたるとともに、学会参加や後継の育成を行っています。
当院は国際ねこ医学会(isfm)よりキャットフレンドリーゴールド認定を受けている病院です。
