
目次
🔹 ウサギの脱毛はすべて病気とは限りません
ウサギの毛が抜けているのを見つけると、多くの飼い主さんは「皮膚病?」と心配されます。
しかし、ウサギの脱毛には生理的(正常)なものと、病的なものの両方があります。
正しく見極めることが、適切なケアと治療につながります。
🔹 生理的(正常)な脱毛:換毛期によるもの
ウサギは年に数回の換毛期があり、季節や室温、日照時間の変化で毛が抜け替わります。
特に春と秋には、全身の毛がふわっと抜けてくることがあります。
✅ 正常な換毛の特徴
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抜ける部分が一定方向にまとまっている(背中→お尻など)
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皮膚が赤くない、フケが少ない
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痒がったり、舐め壊したりしていない
➡ この場合は自然な生理現象であり、ブラッシングや環境管理で十分です。
特に室内飼育では季節感が薄れるため、換毛がダラダラ続く子もいます。
🔹 病的な脱毛:感染症や皮膚疾患によるもの
一方で、次のような脱毛や皮膚変化がある場合は注意が必要です。
⚠️ こんなサインがあるときは受診を
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かゆがる、掻く、噛む、舐め壊す
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皮膚が赤い、カサカサしている、フケが多い
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円形の脱毛(円形ハゲ)ができている
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カサブタや分泌物がある
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脱毛が左右対称に広がる
これらは寄生虫・感染症・ホルモン疾患・ストレスなどが関与している可能性があります。
🔹 主な原因と特徴
| 原因 | 特徴 | 備考 |
|---|---|---|
| ヒゼンダニ(疥癬) | 強いかゆみ、耳・首・背中のフケ・かさぶた | 人にもうつることがあります |
| ツメダニ | フケが多く、かゆみは比較的軽度 | 頭頂部や背中に多い |
| 白癬(カビ・真菌症) | 円形の脱毛、軽いかゆみ | 感染性あり、他の動物にも注意 |
| 細菌感染(膿皮症) | 膿・赤み・臭いを伴う | 傷や湿気が原因のことも |
| ホルモン異常 | 左右対称の脱毛、かゆみなし | 中年〜高齢期に多い |
| ストレス・グルーミング過多 | 自分や他のウサギの毛を抜く | 多頭飼い・環境変化などで発症 |
🔹 検査法
当院では、脱毛や皮膚病変の原因を明確にするために以下の検査を行います。
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被毛・フケの顕微鏡検査(ダニ・真菌・細菌の確認)
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スキンスタンプや培養検査(感染症の確定診断)
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血液検査・ホルモン測定(全身疾患との関連)
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画像検査(エコーなど)(腫瘤・皮下炎症の評価)
小さなウサギに負担をかけないよう、最小限のストレスで正確な診断を心がけています。


ウサギの背部皮膚に認められたツメダニ
🔹 治療法
原因に応じて治療方針は異なります。
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寄生虫感染(ヒゼンダニ・ツメダニ)
→ イベルメクチン系の駆虫薬を安全量で投与します。 -
真菌感染(白癬)
→ 抗真菌薬の外用・内服、環境消毒を併用します。 -
細菌感染
→ 抗生剤の投与と皮膚の洗浄ケア。 -
ストレス性・グルーミング性
→ 環境改善、同居ウサギの分離、行動修正などを行います。 -
ホルモン性
→ 根本疾患(卵巣疾患、内分泌異常など)に対する治療。
いずれも、原因を明確にしないまま薬だけ塗るのは逆効果となることがあります。

🔹 当院の方針
当院では、ウサギの診療経験を活かし、
「脱毛の見た目ではなく、原因そのものを探る」診断を大切にしています。
また、皮膚が弱い子やグルーミングが苦手な子でも、
鎮静なしでの皮膚検査・被毛ケアが可能な場合があります。
症状や性格に応じて、麻酔の有無を柔軟に判断し、
ストレスの少ない診察を行っています。
🔹 まとめ
| 分類 | 主な原因 | 対応 |
|---|---|---|
| 生理的(換毛) | 季節・ホルモン変化 | ブラッシング・環境調整 |
| 感染性 | ダニ・カビ・細菌 | 駆虫・抗真菌・抗菌治療 |
| 非感染性 | ホルモン・ストレス | 根本治療・生活環境改善 |
📍ウサギの毛が抜けてきたら
「ただの換毛かもしれない」「少し様子を見よう」と思っているうちに、
皮膚炎や感染が進行することもあります。
早めの診察で、ウサギの皮膚を守る最適な治療を提案いたします。
気になる脱毛が見られたら、お気軽にご相談ください。
著者プロフィール

白井顕治(しらい けんじ)院長
獣医師、医学博士
日本動物病院協会(JAHA)獣医内科認定医・獣医外科認定医・獣医総合臨床認定医
千葉県で代々続く獣医師の家系に生まれ、動物に囲まれて育って、獣医師になりました。「不安をなくす診療」を心がけて診療にあたるとともに、学会参加や後継の育成を行っています。