膵外分泌不全(EPI)は膵臓の外分泌(消化酵素の小腸への分泌)の機能が低下してしまうことによっておこる、消化吸収不全に起因する病気である。この病気は典型的には大型犬の中年齢(3~8歳)に多い。発症には遺伝が関与していると言われているが、膵炎などで膵臓の構造が失合われてしまった後にも起こすことはある。EPIと診断された場合には改善する病気ではないため、治療は何らかの形で一生行う必要がある。そのため、初期にしっかりと診断する必要がある。
実績詳細
膵外分泌不全(EPI)の雑種犬
検査結果
症例はもとは15kgほどの体重であったが、初診時は7kgほどにまで減少し重度の削痩を呈していた。
食欲はあり、飲水もおこなっていた 。
便検査において寄生虫卵などは確認されなかった。
血液検査及び腹部超音波検査において膵外分泌不全(EPI)が疑われたため、血液の外注検査を行った。
(※画像は項目と解釈を近くに表示するため、一部移動加工してあります。)
検査の結果、EPIであることが確定したため、治療を行った。
治療方法
EPIの治療は主に
①、膵消化酵素の補給
②、ビタミン剤の注射
③、抗生剤の投与
である。食事の内容及び回数に制限はないため、当初は易消化性の消化器疾患用のフードを給仕していたが、徐々に元のフードに戻してもよいという指示を行った。
膵臓疾患ではあるが、消化酵素の添加をしっかりと行えば低脂肪食である必要はない。
また、食事の回数についても、消化酵素がしっかりと添加されていれば一日に何度も行う必要はないため、当初は3~4回に分けて給仕していたが、徐々にもとの1日2回に戻してよいという指示を行った。
ビタミン剤については、膵臓機能が低下するとビタミンB12(コバラミン)の吸収が十分にできなくなり、EPI症例の80%以上が低コバラミン血症を呈していることが明らかとなっている。
低コバラミン状態になると元気が消失し、貧血・虚弱・下痢などの症状が起こる。
消化管からは吸収することができないため、血中濃度を確認しながら1~6週間おきに注射をして補給を行う必要がある。
抗生剤については消化酵素異常によって最近の過増殖が起こっていることも下痢の原因となることがあるため、初期には投薬を行っているが、状態によっては抗生剤投与を行わなくても良好に管理できる症例は多いため、今後は休薬をして様子を見ていく予定である。
治療・術後経過
治療開始翌日から下痢は止まり、治療開始10日後には体重が8kgを超えた。
これから数カ月かけて減少した体重を徐々に戻していく。
EPIは良好に管理できればこれが原因で寿命が短縮される危険性は少ない疾患と言われている。
予後良好
ただし、EPI症例では糖尿病を併発する危険性もあるため今後定期検診を行っていく。
担当医:白井 顕治
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