犬における乳腺腫瘍は、良性であっても悪性転化することがあるため、基本的には乳腺にしこりがある場合には治療対象となる。診断のために針吸引生検を実施する場合もある。この検査で乳腺癌か良性乳腺腫瘍かわかる場合もあるが、良性・悪性の区別よりも、乳腺腫瘍であることの確認のために行うという意味合いが強い(乳腺部に形成された別の体表腫瘍の除外のため)。本症例のように、避妊手術を行っているからと言って、100%腫瘍の発生を回避できるわけではないので、定期的に体を触り、腫瘤の有無を確認してあげましょう。
実績詳細
ミニチュアダックスフントの乳腺腫瘍切除と口腔外科
検査結果
症例は高齢であったが、元気食欲は良好であった。
観察すると左第4~5乳腺部に直径2~3センチほどの腫瘤が認められた。
インフォームドコンセントを行ったところ、手術を希望されたため、外科的に摘出を行うこととした。
また、同時に口腔内処置も希望されたため、スケーリングを実施した。
治療方法
乳腺切除から行った。
なお、この症例は避妊済みのメスであるため、卵巣子宮摘出は行う必要がない。
左乳腺の下部に腫瘤が限局していたため、切除は右乳腺下半分切除とした。
また、麻酔下で全乳腺を入念に検査したところ、右乳腺にも直径6ミリほどのしこりが認められたため、局所切除を行った。
口腔処置としては重度の歯周病となっていたため、動揺歯および重度に歯肉の後退した歯については抜糸を行った。
治療・術後経過
口腔外科を行ったので、術後10日間は軟らかいフードの給仕を行った。
また、術日および手術翌日には肺炎予防の目的でネブライザーを実施した。
乳腺術部は感染が起きることなく良好に癒合し、術後14日後に抜糸を行った。
ーー以下摘出乳腺の病理組織検査ーーー
摘出された乳腺では、左3乳腺部において、悪性傾向を示す乳腺腺癌が形成されています。腫瘍の境界は明瞭で、周囲組織への浸潤性は認められません。摘出状態は良好で、鼠径リンパ節にも腫瘍性の病変は認められませんが、形態的には悪性傾向を示す腫瘍であることから、引き続き、局所やその他のリンパ節の状態について、経過観察をお勧めします。右2乳腺では、良性の乳腺腫瘍が形成されています。この腫瘍に関しては、今回の切除により予後は良好と考えられます。
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術中に見つかった腫瘤も乳腺腫瘍であった。
また、摘出した左乳腺は乳腺眼という診断だったが、摘出状況は良好であり、現在定期観察中である。
口腔内については、口臭も減り、一般的なドッグフードを食べられるようになっている。
経過良好
担当医:白井 顕治
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