ペットの体表にできもの(腫瘤)が形成された場合には、大きく分けて、①腫瘍じゃないもの、②良性腫瘍、③悪性腫瘍に分かれます。①~③のどれなのか、また、その診断名はなんなのかによっても治療方針はかなり変わってきます。また、今回のような悪性腫瘍で、さらに手術を行うことが第一選択の治療と判断されるような腫瘍の場合には、最初の手術が最も大切な処置となります。しっかりと計画を立てるためにも、診断を行い、治療に臨みましょう。
実績詳細
シュナウザーの趾端に形成された悪性黒色腫(メラノーマ)
検査結果
症例は腫瘤の形成されている左後肢の趾端を気にして舐めており、出血することがある。
触診の結果、左後肢の膝窩リンパ節の腫大が認められた。鼠径リンパ節は触知されず、また、腹部超音波検査において腸骨領域のリンパ節の腫大も認められなかった。
局所のレントゲン写真では腫瘤に隣接する部位での骨融解像が認められた。
また、以前に診療を受けていた病院で渡された病理診断書より、メラノーマという組織診断が疑われているため、後肢趾端に再発形成されたメラノーマ(膝窩リンパ節まで転移している可能性が高い)と診断された。
治療方法
完治を目的とした積極的な治療として手術や放射線治療を行うか、局所と全身状態の緩和を行い対症療法で経過を観察していくかの相談をご家族と行った。
手術を行う場合には、断脚もしくは断指と膝窩リンパ節の切除を行うなどの手術方法があり、場合によっては術後放射線を行うこともインフォームドコンセントとして行いました。
対症療法としては、腫瘤の拡大を制御するために、局所に抗がん剤注入や腫瘤の凍結処置による縮小をめざし、また、そのほかに跛行や全身症状が出た際にはその都度経過を観察していくとインフォームドコンセントを行いました。
治療・術後経過
相談の結果、後者の対症療法を選択されたため、現在腫瘤に対するブレオマイシンの局所注射とエリザベスカラーの設置を行い局所の出血をコントロールして、安定しています。
診断より、予後はあまりよくありません。
担当医:白井 顕治
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