子宮蓄膿症(パイオメトラ)は、子宮に膿がたまってしまう状態であり、正常な子宮から、子宮水腫や子宮内膜症を介して子宮蓄膿症へと進行していく経過がみられる症例もあれば、突然子宮蓄膿を起こして来院するケースもあります。実際には子宮水腫や内膜過形成の段階では臨床症状はないため、定期検診で見つかり、経過観察を行っている場合に早期に発見できることがあります。
子宮蓄膿症になった場合には、水を沢山飲んだり、元気や食欲がなくなったり、お腹が痛いような様子でうずくまったりする症状を示しますが、度の症状も絶対に出るというものではありません。陰部からの排膿は子宮頸管の開き具合では、認められないこともあります。また、少量の排膿の場合にはわんちゃんがなめとってしまい、ご家族が気が付かないケースもあります。
最も重要な点として、中年齢の避妊をしていないわんちゃんが体調不良を起こした場合には、常にこの疾患を疑う必要があるということです。
実績詳細
ゴールデンレトリバーの顆粒膜細胞腫と子宮蓄膿症(パイオメトラ)
種類 | ゴールデンレトリバー |
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年齢 | 9才 |
診療科目 | 軟部外科・整形外科 腫瘍科 |
症状 | 陰部から悪露のようなものが出ている |
症状の概要
検査結果
症例は軽度に元気食欲の低下を呈していた。
陰部から血様の膿汁を排泄し続けており、未避妊の中年齢のメス犬であるというヒストリーより、子宮蓄膿症を強く疑った。
腹部超音波検査の結果、拡張した子宮と不整な卵巣が確認された。
治療方法
臨床症状が認められるため、手術により卵巣および子宮を摘出することとした。
陰部より排膿している。
排膿していたため、子宮の拡張は軽度である。
摘出された子宮および閉腹後の腹部。
術後に膣洗浄を行った。
治療・術後経過
術後より食欲旺盛で、すぐに回復した。
ーー以下、病理所見ーーー
子宮では、内膜過形成を伴った慢性的な化膿性炎症が認められます。子宮内膜の過形成に二次的な細菌感染が起こったために蓄膿に至った病変と考えられます。
片側の卵巣では、小型の結節性の腫瘍が形成されています。腫瘍は卵胞を構成する顆粒膜細胞に由来する腫瘍です。腫瘍は初期の段階で摘出されていることから、今回の摘出により予後は良好です。また、複数の嚢胞が形成されていますが、この病変は加齢や内膜の増生に伴って、しばしば偶発的に認められる変化です。反対側の卵巣では、著変は認められません。
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片側の卵巣において初期の顆粒膜細胞腫が認められたが、摘出状況が良好であるため、今後は定期的に経過観察するものとした。
経過は良好である。
担当医:白井 顕治
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