会陰ヘルニアは去勢手術を行っていないオスに多く発生する疾患である。病気としては、会陰部の筋肉が非薄化してしまい、腹腔内の臓器がその非薄化部分から腹腔外に脱出してしあうことによっておきます。脱出して筋肉が押し広げられて形成された孔をヘルニア孔と呼びます。
一言に会陰ヘルニアといっても、ヘルニア孔からどんな臓器がどのくらい、どのように脱出するかで会陰ヘルニアの緊急度は変わります。
脱出する可能性がある臓器としては、直腸・小腸・腹腔内の脂肪・膀胱・前立腺などがあります。メスであれば子宮が脱出することもありますが、そもそも雌に発生することがまれな疾患であるため、子宮が脱出している会陰ヘルニアに遭遇する確率は極めて低いです。
この中でも小腸や膀胱は特に重症度か高く、排尿不全が認められる場合には速やかな外科療法を選択すべきといえます。
直腸が脱出している場合が最も多いですが、その場合にも通常は外科療法が選択されます。ただし、内科療法で良好な結果が表れている症例や、すでに高齢であったり、持病を持っていて麻酔リスクが高いと判断される症例に関しては、内科療法で維持するという選択肢が選ばれることもあります。
ヘルニアの内容物はその時によって変化することもあるため、主治医と相談のうえ、治療内容を決定していきましょう。
実績詳細
チワワの会陰ヘルニアと脾臓腫瘍の摘出
種類 | チワワ |
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年齢 | 14 |
診療科目 | 軟部外科・整形外科 消化器科 |
症状 | お尻の部分が腫れている、排便できない |
症状の概要
検査結果
身体検査において、症例の肛門から左側の部分が顕著に腫脹していた。
直腸検査・レントゲン検査、および腫脹部分のエコー検査において、会陰ヘルニアであり、脱出している内容物は診断時においては小腸及び腹腔内の脂肪がヘルニア内に脱出していた。
また、腹部超音波検査において脾臓に直径3.5センチの腫瘤を認めた。
治療方法
症例は2年前に右側会陰ヘルニアの手術済みである。
手術当時は左側に異常は認められなかったが、時間差で左側も会陰ヘルニアになっている。
高齢であり手術を行うかどうかご家族と相談したところ、排便ができずにずっと力んでいることから、手術によるヘルニアの整復が選択された。
また、腹腔内の脾臓腫瘍に関しても併せて摘出することとした。
前回の手術時に直腸固定を施しているため、今回の術式は腹腔内脾臓摘出及び左側会陰ヘルニアの整復のみとなる。
治療・術後経過
術前、肛門左側が腫れあがり、横から見ると肛門が坐骨最後端よりもさらに尾側に変異していることがわかる。
切開し、ヘルニア内容を腹腔内に還納し、メッシュを用いてヘルニア孔の閉鎖を行った。
術後、肛門が坐骨よりも頭側に整復されている。
次いで、腹腔内の脾臓の腫瘤を摘出した。
術後翌日より良好に排便する行為が認められ、メッシュ部の感染も起こすことなく退院となった。
脾臓の腫瘍については、ご家族と相談をした結果、病理検査は行わずに経過観察することとした。
経過良好
診療担当・執刀医:白井 顕治
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