横隔膜ヘルニアには、生まれつきに横隔膜が正しく形成されないために起こる先天性横隔膜ヘルニアと、今回の症例のように、腹部に強い外傷を負った結果に生じる外傷性横隔膜ヘルニアに分けられる。外傷性横隔膜ヘルニアを生じるような原因としては、交通事故や高所からの落下、腹部をけられるなどの虐待がある。
横隔膜が裂開することにより呼吸がうまくできないため、通常は浅く・早い呼吸になるが、猫の場合には特に呼吸様式に顕著な変化が認められないこともある。また、胸腔内に脱出する臓器に関しては、上腹部に存在する肝臓や胃、脾臓、小腸、腹腔内の脂肪があげられる。
裂開が小さく、臓器の一部しかヘルニアを起こしていない場合には早期診断が難しい場合もある。
外傷性横隔膜ヘルニアは、裂開のパターンがいくつか存在し、また、空いてしまった穴も、10%ほどの症例で複数個所開いていることがあるため、注意が必要である。
実績詳細
雑種猫の外傷性横隔膜ヘルニア整復手術
種類 | 雑種猫 |
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年齢 | 6歳 |
診療科目 | 軟部外科・整形外科 |
症状 | 家の外に出て、帰ってきてから呼吸の様子がおかしい |
症状の概要
検査結果
症例は腹式呼吸を行い、元気消失した状態だった。
身体検査では下腹部皮下に内出血が認められたことから、交通事故にあった可能性があることが示唆された。
レントゲン検査及び腹部超音波検査において、外傷によって横隔膜が裂傷し、腹腔内の臓器が胸腔にヘルニアを起こす外傷性横隔膜ヘルニアであることが診断された。
治療方法
外傷によって横隔膜が裂開しているため、整復手術を行うこととした。
腹壁を切開したところ、横隔膜腹側が横隔膜全周の半分ほど裂開しており、腹腔内から胸腔内蔵機である肺や心臓が確認できる。
横隔膜に糸を通し、予定整復ラインに縫着させていく
糸をすべて結紮して、空気の漏れやほかに裂開部位がないことを確認して手術終了とした。
再び外に出る可能性が高いということから、埋没縫合によって皮膚を縫合した。
治療・術後経過
症例の呼吸は手術後から改善し、翌日には食欲も出てきた。
今回の手術は外傷によるものなので、異常が整復された後、全身状態も速やかに一般状態も改善した。
担当医・執刀医:白井 顕治
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