哺乳類の精巣は、胎児期に腹腔内で形成され、動物種により時期は異なるが、出生前後に鼠経から腹腔外に出て、陰嚢内に収まるのが正常である。
潜在精巣(陰睾、停留睾丸なども同義)は、腹腔内で形成された睾丸が陰嚢に入っていない状態で、片方が潜在精巣のこともあれば、両側が潜在精巣である可能性もある。
猫の場合には、精巣が存在する場合には陰茎先端に陰茎棘という構造が残っているため、術後であっても陰茎曲を確認することによって精巣が残存しているかどうかを判断することができる。犬においては、潜在精巣は高確率で精巣腫瘍になることがわかっているが、ネコにおいては明らかな情報は出ていない。しかし、犬と比較してスプレー行為や尿臭がきつくなるなどの変化が出ることが比較的多いため、いずれの場合においても手術により両側の睾丸を摘出することが重要である。
比較的よく他院において「どこにあるかわからないから、とても大きな切開をしないと発見できない」「骨盤を開かないと発見することができない」などという説明を受けて困惑するご家族がいらっしゃいますが、そんな必要はありません。睾丸は腹腔内において存在する場所はある程度決まっているため、術創は雌における避妊手術よりやや小さい穴で手術を終えることができます。
実績詳細
マンチカンの片側潜在精巣
種類 | マンチカン |
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年齢 | 9か月 |
診療科目 | 軟部外科・整形外科 |
症状 | 潜在精巣といわれた。 |
症状の概要
検査結果
症例はペットショップから迎え入れた時から、片側潜在精巣であることを告げられていた。
近医で去勢手術を実施したが、正常の睾丸しか発見できなかったということで当院を受診。
1回目の他院での手術から1か月経過してから、手術を行うこととした。
治療方法
触診においては発見することができなかったが、右鼠経輪部に停留している睾丸を発見し、切除を行った。
治療・術後経過
術創は正常に治癒し、治療終了とした。
担当医:白井 顕治
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