指端には肥満細胞腫やメラノーマなど、比較的悪性度の高い腫瘍が形成されることがあるため、発見した場合には細胞診の検査を行うことが大切である。細胞診の検査所見をもとに、治療計画を立てて手術を行うことが、治療において大切なポイントと言える。
実績詳細
雑種犬の指間に形成された肥満細胞腫(グレード2、c-kit変異なし)
検査結果
症例は30キロ程度の大型犬であった。
指間に小さな腫瘤が形成されたということが主訴だったため、細胞診を実施した。
ー--以下細胞診所見ー--
肥満細胞が集塊状に得られていることから、肥満細胞腫と考えられます。腫瘍細胞に強い異型性は認められませんが、肥満細胞腫は転移する可能性がある腫瘍です。
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細胞診所見をもとにc-kit遺伝子ITD変異検査を実施したところ、c-kit遺伝子に変異は認められなかった。
治療方法
ご家族と相談した結果、指を含めて拡大切除を行うこととした。
術前と、切開線を入れたところ
切除後
縫合後
ー-以下病理所見ー-
検索した指端部の腫瘤は、グレード2の肥満細胞腫(2段階評価では低悪性度)と診断されます。脈管内に明らかな腫瘍性の病変は認められませんが、腫瘍の境界は不明瞭で、指間部の皮下の断端マージン付近にも腫瘍細胞が認められます。指端部に形成された、やや大型の腫瘍であることから、引き続き、局所再発や所属リンパ節の状態について、経過には注意が必要です。
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治療・術後経過
症例の体重が重かったため癒合に時間がかかったが、術後1か月で術部は安定した。
マージン周囲に腫瘍細胞が認められたものの、低悪性度であり、c-kit遺伝子変異も認められないということから、ご家族と相談した結果、術後の抗がん剤は実施せずに、経過を観察していくことを希望とのことだった。
現在術後2年経過しているが、再発の兆候は認められない。
担当医・執刀医:白井 顕治
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