前十字靭帯断裂は、年齢に関係なく治療を検討すべき疾患です。
特に高齢犬では、「もう年だから…」と様子を見ているうちに関節炎が進行し、慢性的な痛みや歩行困難が固定してしまうケースが多く見られます。
しかし、近年の外科機器や麻酔管理、疼痛コントロールの進歩により、10歳を超える犬でも安全にTPLOを行い、良好な回復を得ることが可能になっています。
当院では、術前に心臓・腎臓・肝臓などの全身状態をしっかり評価したうえで、リスクに応じた麻酔プランを個別設計しています。
また、術後は疼痛管理と早期リハビリを重視し、術後3〜5日以内に負重を開始するケースがほとんどです。
高齢犬でも、痛みが取れてしっかり歩けるようになると、表情が明るくなり、食欲や活動性も回復します。
年齢よりも「現在の生活の質(QOL)」を基準に治療を判断することで、結果的に寿命にも良い影響を与えることがあります。
この症例のように、11歳でも適切な管理下でTPLOを行えば、安全かつ高い生活の質を取り戻すことができます。
実績詳細
雑種犬(20kg)の前十字靭帯断裂に対するTPLO術(脛骨高平部水平化骨切術)
種類 | 雑種犬 |
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年齢 | 11歳 |
診療科目 | 軟部外科・整形外科 |
症状 | 左足を痛そうにしている。座り方がおかしい |
症状の概要
検査結果
左後ろ足をかばうような歩き方が見られたため、膝関節の検査を行いました。
膝の靭帯のゆるみを確認する「前方引き出しテスト」および「脛骨圧迫テスト(クラニアルドロアテスト)」で陽性反応があり、
さらにレントゲン検査で膝蓋靭帯付近にファットパッドサイン(脂肪体のズレ)が確認されたため、前十字靭帯断裂と診断しました。
治療方法
変性して断裂した前十字靭帯と損傷した内側半月板を丁寧に除去しました。
その後、脛骨(すねの骨)にマーキングを行い、ラウンドソーで計画的に骨をカット。
角度を調整して骨を回転させ、TPLOプレートで固定し、膝の安定性を回復させました。
20kgと体格の大きいワンちゃんでしたが、しっかりと骨の固定を行うことで、術後の安定性を確保しています。
治療・術後経過
術後4日目より足をつき始め、16日後にはやや軽い負重ながらも良好な歩行が確認できました。
体重があるため時間は少しかかりましたが、順調な回復経過でした
大型犬や中型犬では、膝関節への負担が大きく、前十字靭帯断裂後は安定した固定と術後管理がとても重要です。
体格が大きい子でも、適切な手術とリハビリでしっかり歩けるようになるケースは多くあります。
症状が見られた場合は、早期の受診・治療をおすすめします
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