実績詳細

ヨークシャーテリア(4.4kg)の左前十字靭帯断裂に対するTPLO術(脛骨高平部水平化骨切術)

種類 ヨークシャーテリア
診療科目 軟部外科・整形外科 
症状 突然左足をあげるように歩いている

症状の概要

当院では、TPLO手術後の退院日を 術後2〜3日 に設定しています。
これは、手術直後の痛みや腫れをできるだけしっかりコントロールし、
入院中にアイシングや鎮痛管理を十分に行うことで、退院後の回復をスムーズにしたいという考えからです。

他院では手術翌日に退院とするところもあります。
翌日退院のメリットは、
・犬がいつもの家に戻れてストレスが少ない
・飼い主と一緒に過ごせる安心感がある
といった点で、これは確かに良い側面です。

一方で、翌日退院には
・興奮しやすい性格だと安静が保ちにくい
・十分なアイシングがしづらい場合がある
といったデメリットもあります。

退院日について絶対的な正解はなく、
犬の性格・飼い主の生活環境・術後の反応など、個々の状況によっても向き不向きが変わります。

当院では、
「できるだけ落ち着いた状態で退院してほしい」
「術後の炎症管理を院内で確実に行いたい」
というスタンスを大切にしており、現在の退院方針を採用しています。

もちろん、飼い主様のご希望や犬の状態によって柔軟に対応できますので、
退院についてご不安なことがあればいつでもご相談ください。

検査結果

左後肢の跛行を主訴に来院し、触診では膝関節の腫脹と疼痛反応を認めました。前方引き出し試験(クラニアルドロアサイン)および脛骨圧迫試験はいずれも明確に陽性で、膝関節の不安定性が確認されました。

さらにレントゲン検査にて、膝蓋靭帯前方の脂肪パッドサイン(ファットパッドサイン)が際立っており、関節液の貯留と急性期の関節炎変化を示す所見が認められました。

これらの所見を総合し、左前十字靭帯の完全断裂と診断しました。

治療方法

手術ではまず皮膚を切開し、膝関節包を開いて内部を確認しました。断裂していた前十字靭帯を取り除き、損傷が認められた半月板も適切に処理しました。
その後、脛骨の角度を調整する TPLO(脛骨高平部水平化術) を行い、専用のソーで脛骨を円形に切り、角度を回転させたうえでプレートでしっかりと固定しました。最後に創部を縫合して手術を終了しました。

 

  

 

治療・術後経過

手術の翌日には、左後肢での接地が確認でき、ゆっくりと歩行する様子が見られました。術後1週間後に抜糸を行い、経過は順調です。今後は骨の癒合や歩行状態を確認するため、定期的に検診を続けていく予定です。

また、反対側(右後肢)は現在のところ断裂していませんが、前十字靭帯断裂は両側に起こることもあるため、今後も注意深く観察していくことが大切です。

担当医:白井 顕治

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