前十字靭帯断裂は、片足だけでなく 反対側の脚にも起こりやすい病気 です。1本目が切れてしまった時点で、もう片方も同じリスクを抱えていると考える必要があります。もし両側が断裂してしまうと、後ろ足で体重を支えられず、歩行が非常に困難になる可能性があります。
ただし、片側を手術して改善している場合、その足は安定しているため、たとえ反対側が新たに断裂したとしても、最低限3本脚での生活は確保されるという点は大きなポイントです。
とはいえ、多くの犬は散歩が好きで活動的です。
そのため、もう片方の脚も手術を行うことで、4本の脚をしっかり使って歩くことができ、生活の質が大きく向上します。
実際には、2本目の断裂が起こった場合、多くの症例で手術を受ける選択が一般的です。
ただし例外もあり、
高齢である
腎不全などの重い持病がある
麻酔リスクが高い
といったケースでは、2本目の手術を急がず、犬の体調や生活背景を踏まえて慎重に判断していきます。
どちらの足をどう治療するかは、生活の質・健康状態・家族の希望 を総合的に考えて、一緒に最適な方法を決めていくことが大切です。
実績詳細
ミニチュアシュナウザー(7.8kg)の右前十字靭帯断裂に対するTPLO術(脛骨高平部水平化骨切術)
| 種類 | ミニチュアシュナウザー |
|---|---|
| 診療科目 | 軟部外科・整形外科 |
| 症状 | 右足を突然浮かし始めた。半年前に他院で左足前十字靭帯断裂と診断され手術を受けている |
症状の概要
検査結果
右後肢の跛行を主訴に来院しました。触診では膝関節に腫脹と痛みを認め、前方引き出し試験(クラニアルドロアサイン)および脛骨圧迫試験で明らかな陽性反応が確認されました。
レントゲン検査では、膝蓋靭帯前方の脂肪パッドサイン(ファットパッドサイン)が強く、関節液の貯留と急性の炎症を示す変化が認められました。
これらの結果を総合し、右前十字靭帯断裂と診断しました。
治療方法
右後肢に対して外科手術を実施しました。
まず皮膚切開を行い、膝関節包を開いて関節内を確認しました。
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断裂した前十字靭帯を除去し、関節内を整復
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損傷していた内側半月板の処理を適切に実施
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続いて TPLO(脛骨高平部水平化術) を行いました
— ラウンドソーで脛骨を計画どおりに骨切り
— 骨片を適切な角度に回転
— 専用のTPLOプレートでしっかり固定
最後に各層を丁寧に閉創し、手術を終了しました。



治療・術後経過
手術翌日には右後肢の接地が確認でき、早い段階から歩こうとする動きが見られました。術後3日目に退院し、退院時にはわずかに跛行は残るものの、しっかりと自力で歩行できる状態まで回復していました。
飼い主様からも「今回はとても回復が早く、順調に良くなっているように感じる」とお話しいただき、経過としても非常に良好でした。今後も検診を続けながら、骨の癒合や歩行状態を慎重に確認していく予定です。
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