実績詳細

雑種犬(22kg)の左前十字靭帯断裂に対するTPLO術(脛骨高平部水平化骨切術)

種類 雑種犬
診療科目 軟部外科・整形外科 
症状 左後肢を浮かせて歩けなくなった。半年前に右前十字靭帯断裂をして当院にてTPLO手術を受けている

症状の概要

🟦 前十字靭帯断裂:TPLOが推奨される理由について(まとめ)

前十字靭帯断裂の治療法にはいくつかの選択肢がありますが、現在の獣医整形外科では 体重や犬種にかかわらず、TPLO(脛骨高平部水平化術)が最も安定性を得られる手術 と考えられています。特に中型犬以上では、関節にかかる力が強くなるため、TPLOがより強く推奨される傾向があります。

🟨 FLO法(ラテラルスーチャー)と比較すると?

FLO法は、膝の外側に強い糸(スーチャー)をかけて膝が前に滑らないようにする手技で、小型犬ではこれでも改善が得られることがあります。

しかし、FLO法は“糸の強度”に依存する手術であるため、

体重が大きい

活発に動く

散歩量が多い
といった犬では糸が緩んだり伸びたりしやすく、膝の不安定性が戻ってしまうことがあります。

一方TPLOは、膝の構造そのものを安定させる手術で、体重や活動性の影響を受けにくく、

歩行の回復が早い

再発が少ない

長期的に安定した関節機能が期待できる
という特徴があります。

そのため、体重が増えるにつれてTPLOの優位性が大きくなるという点がFLO法との大きな違いです。

🟥 結局、どの犬種でもTPLOが推奨されている理由

近年のスタンダードでは、
「前十字靭帯断裂=TPLO」
という流れが一般化しています。

理由はシンプルで、
TPLOは“体重・犬種・活動量によるブレが少なく、安定して良い結果が出せる”ためです。

特に中型犬以上(おおむね10〜12kg以上)では、
糸で膝を支えるFLO法は負荷に耐えにくいため、
TPLOが第一選択として強く推奨される と考えられています。

検査結果

左後肢を挙上し、まったく体重をかけられない状態で来院しました。半年前に右前十字靭帯断裂の手術(TPLO)を当院で行っており、今回は反対側の左膝に問題が疑われました。

触診では左膝関節に腫れと痛みがあり、前方引き出し試験(クラニアルドロア)および脛骨圧迫試験でいずれも明確な陽性反応を認め、膝関節の不安定さが強く確認されました。

レントゲン検査では、膝蓋靭帯前方の脂肪パッドサイン(ファットパッドサイン)がはっきりと現れており、関節液の貯留と炎症を示す典型的な所見が確認されました。

これらの身体検査および画像所見を総合し、左前十字靭帯の完全断裂と診断しました。

治療方法

 

左後肢に対して外科手術を行いました。まず皮膚切開を行い、膝関節包を開いて内部を確認しました。断裂していた前十字靭帯は残存組織を含めて丁寧に除去し、内側半月板についても損傷の有無を確認し、必要な処置を行いました。

続いて、脛骨の角度を調整する TPLO(脛骨高平部水平化術) を実施しました。ラウンドソーで脛骨を計画どおりに円弧状に骨切りし、骨片を適切な位置に回転させ、専用のTPLOプレートでしっかりと固定しました。最後に各組織を丁寧に閉鎖し、手術を終了しました。

治療・術後経過

手術翌日には左後肢の接地が確認でき、早い段階から歩こうとする動きが見られました。術後に一過性の食欲低下がありましたが、退院後の経過とともに改善し、1週間後の抜糸時には食欲も戻り、元気さも問題ありませんでした。

術後2週間の再診では、歩行状態・一般状態ともに良好で、インプラントの位置や骨切り部の経過にも異常はなく、順調な回復を示していました。

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