はじめに
近年飼育頭数の増えてきた爬虫類の中で、トカゲに多い疾患を紹介します。
トカゲは品種や特性によって罹患しやすい疾患が異なります。この記事では特に飼育頭数の多いヒョウモントカゲモドキやフトアゴヒゲトカゲを主な対象として記載していきます。
眼の病気
眼と、眼の周囲に多い疾患や、症状を紹介します。
結膜炎
様々な理由で結膜炎が起こり瞼が腫れることがあります。
根本的な原因が目ではないこともしばしばあります。例えば、口内炎が重篤化し目に感染が波及して結膜炎を起こしたり、脱皮不全が起こり、2次的に結膜炎を起こしてしまうこともあります。
治療は原因の改善、炎症のコントロールを実施していきます。
虹彩の充血
目が炎症すると虹彩が充血することがあります。
細菌感染などにより虹彩が赤く充血がみられることもあります。症状としては目を閉じている時間が長くなったり、目を気にして舐めてしまう個体もいます。
治療は適切な抗菌薬を点眼または内服し、炎症の程度により、消炎剤を併用します。
涙の増加
感染や炎症などの種々の原因により涙が増加することもあります。
検査を実施し、原因に対する治療をすることで涙の量も正常に戻っていきます。
皮膚の病気
皮膚(体表のうろこ)に多い疾患や症状を紹介していきます。
脱皮不全
温度や湿度などの飼育環境が不適切だと脱皮がうまくいかず脱皮不全になることがあります。また全身性の疾患で体調が悪い子も脱皮不全を起こす場合もあります。
生活環境の改善や、全身性の疾患のチェックをしながら治療をしていきます。程度により脱皮を介助しなければならないこともあります。
細菌感染
細菌の感染により皮膚に炎症が起こることもあります。
治療は適切な抗菌薬の使用を行います。
真菌感染
真菌(カビ)の感染を皮膚に起こすこともあります。真菌感染では長期間の抗真菌薬の投与を実施します。
重篤な感染を起こすと、感染部位を切断しなければならない事もあるので早めに対応することが重要です。
火傷
パネルヒーターなどの保温機器が原因で火傷を起こしてしまうこともあります。
火傷の原因の除去と、炎症や痛みのコントロールと二次感染の予防を行っていきます。
腫れている
体表や口の中に腫れている部分があるときに考えられる疾患を紹介して行きます。
痛風
痛風では血液中の尿酸と呼ばれる物質の濃度が上がることにより、関節や内臓に結節(かたまり)を形成します。関節が腫れるタイプではご家族も気がつきやすいです。
血液中の尿酸排泄を促すお薬で治療していきます。
皮下膿瘍
皮膚の下に膿が溜まってしまうことがあります。原因は様々ですが、溜まってしまった膿を出し、消毒を行うとともに必要に応じて適切な抗菌薬を使用します。
卵詰まり
卵胞や卵を抱えることによりお腹が腫れているように見えることがあります。
異常な状態なのか、正常な段階なのかを判断するためにレントゲン検査や超音波検査を実施したり、状態によっては手術で摘出することもあります。
口内炎(顎骨溶けて顎腫れてる)
顎が腫れている場合、口内炎が重篤化し骨を溶かして腫れてしまうことがあります。と
溶けてしまった骨を戻すことは難しいですが、感染や炎症をコントロールして進行を防ぎます。進行すると顎の骨が骨折を起こすこともあるため、早期に治療することが大切です。
便秘
便秘によりおなかが腫れて見えることがあります。レントゲン検査やエコー検査で診断します。
水和をしたり、内科的な治療に反応しない場合は重篤度により手術で便を摘出することもあります。
食欲がない
食欲がない時に考えられる疾患を紹介します。ただし、食欲不振は様々な疾患で発生することがあるため、すでに上記で紹介した疾患であっても食欲不振をおこすことはあります。
内部寄生虫
トカゲを含む多くの爬虫類の個体では、お腹の中に虫(内部寄生虫)が存在していることがあります。野生個体だけに存在しているわけではなく、国内繁殖の個体だから寄生虫がいないというわけではありません。症状のないうちから健康診断の一貫として糞便検査をして寄生虫の有無を確認することで、重篤化する前に対応が可能なものも多くあります。
腎不全
“食欲がない”といっても消化管の病気だけが原因とは限りません。腎臓の機能が低下することで食欲が出ないこともあります。血液検査で腎機能を評価することで発見できます。
治療は点滴や水和などを行います。
卵詰まり(卵胞鬱滞)
卵を抱えることで、消化管が圧迫され食欲が出ないこともあります。正常な場合もありますし、命に関わる状態になっていることもありますので早めの受診が大切です。
まとめ
トカゲやカメレオンなどの爬虫類を飼育する際には、その品種の本来の食性(肉食や雑食、草食など)や、生活環境(樹上性や地表性、気温や湿度、紫外線の強さなど)を理解して飼育してあげることが重要となります。
もちろん、適正に飼育していても病気になってしまうことはありますので、あてはまる症状がありましたらお気軽にご相談ください。
著者プロフィール
清水 麗子(うららこ) エキゾチックアニマル担当獣医師
年間2500件以上のエキゾチックアニマル診療を行っております。
ウサギやハムスターだけでなく、鳥類や爬虫類を含めた様々な品種のエキゾチックアニマルの内科疾患・外科疾患を受け持っています。
飼育相談から病気まで、お気軽にご相談ください。