※この記事は、猫に限定した情報です。犬とは異なりますのでご注意ください
(※症例の患部の写真がございます。苦手な方はご注意ください)
目次
猫の口にしこりがあると出る症状
口の中のしこりの大きさや場所、痛みの有無により異なりますが、主に食事をするときの咀嚼や嚥下の際に痛みを感じたり、流涎が多くなる症状が認められます。ご飯に対して興味はあったり、口にくわえたりすることはできるが、噛んだり飲み込んだりができなかったり、ドライフードは食べることができないがウェットフードは食べることができるなどの主訴が多く認められます。
また、流涎がひどい場合には、口の周りの毛がべたべたになってることもありますが、前肢で拭うことによって、顔周りはきれいだが前肢が汚れていることもあります。
口腔内の腫瘤によって流涎が認められる
猫の口の中のしこりは悪性?
猫の口にしこりが形成された場合には、大きく分けて腫瘍と非腫瘍性病変に分けられます。
非腫瘍性病変としては、慢性・化膿性炎症や、憩室細胞性口内炎な肉芽腫性炎症によって形成される腫瘤で、しこりに見えるものの、正確には腫瘍ではありません。
確率的には50%程度はこのような炎症により形成された腫瘤となります。
悪性腫瘍としては口腔扁平上皮癌の発生率が最も高く、口腔内の腫瘤全体の約25%を占めます。
悪性腫瘍の発生率の高い順にあげると口腔扁平上皮癌や繊維肉腫、リンパ腫や肥満細胞腫などの独立円形細胞由来の腫瘍となります。
(非腫瘍性病変)
良性の腫瘤である繊維性ポリープ
非腫瘍性病変の唾液瘤
悪性腫瘍である繊維肉腫
悪性の腺扁平上皮癌
猫の口の中のしこりの診断や見分け方の有無
口腔内のしこりの診断には全身麻酔下での組織生検が必要となります。口腔内の腫瘍性病変を疑っての検査ですので、細胞診で判断することはできません。
良性腫瘍と悪性腫瘍の見分け方があるかどうかですが、残念ながら組織検査を行わずに外見上の特徴から見分けるといったことはできません。
「舌にできている」、「頬にできている」、「歯の横にできている」といった場所からも腫瘍の種類を決定することはできません。
また、「本人が痛がってよだれを流している」、「本人はあまり気にしていない」といったことも、良性や悪政を鑑別するポイントとはなりません。
組織検査と併せて腫瘍の拡大の程度を調べるためにCT撮影を行ったり、口腔内の炎症制御の目的でスケーリングを実施したりすることもあります。
腫瘍は組織生検を実施して診断する
猫の口にできたしこりの検査の費用は?
検査は全身麻酔下にて実施されます。麻酔前検査や組織生検費用、病理検査費用がかかります。そのほかにも場合によってスケーリングやCT、栄養チューブの設置が必要な場合にはその費用が加算されると考えられます。
しこりによる痛みの有無
口腔内に腫瘍があり、潰瘍が形成されている場合には軽度~重度の疼痛を示します。
痛いとどのような症状が出るか
猫が痛みを感じるときに出す症状はその個体によって異なります。
毛づくろいをしなくなったり、普段とは異なる場所でうずくまっていたり、リラックスした体制をしなかったり、イライラする症状も認められます。
時に痛みのストレスによって特発性膀胱炎を発症し、血尿が出ることもあります。
食事をとれない場合
口に腫瘍が形成され、物理的もしくは痛みによって食事がとれない場合には、食道チューブや胃瘻チューブなどの栄養チューブの装着を考え、ご家族と設置するかを相談します。
(サイト内リンク)
【獣医師監修】栄養チューブの設置費用や入院期間、メリットとデメリットについて解説
まとめ
猫の口の中にしこりがあったとしても、必ずしも悪性腫瘍というわけではありません。
また、腫瘍だったとしても早期に診断した方が治療成績も良いことが多いため、発見し次第検査を実施しましょう。
著者プロフィール
白井顕治(しらい けんじ)院長
獣医師、医学博士、日本動物病院協会(JAHA)内科認定医・総合臨床認定医
千葉県で代々続く獣医師の家系に生まれ、動物に囲まれて育って、獣医師になりました。「不安をなくす診療」を心がけて診療にあたるとともに、学会参加や後継の育成を行っています。
【猫のおしっこが出ない時は病院へ。特発性膀胱炎の原因と治療方法】
当院は国際ねこ医学会(isfm)よりキャットフレンドリーゴールド認定を受けている病院です。