尿が出ていない場合には、大きく分けて無尿や乏尿のような、腎臓で尿を作っていない場合と、今回のような尿路閉塞によって排尿ができていない場合とがあります。どちらにしても緊急性の高い状態である事に変わりはありませんので、排尿が認められない場合には様子を見ずに速やかに動物病院を受診しましょう。
実績詳細
雑種犬の結石による尿路閉塞
検査結果
症例は沈鬱状態で、意識レベルはやや低下していた。
血液検査を行った結果、高窒素血症とフィラリアの感染が認められた。
また、心雑音が聴取されたため、心エコー検査を実施したところ、僧帽弁および三尖弁に弁膜症に伴う閉鎖不全症が確認された。
僧帽弁逆流の程度からACVIMグレードB1と判断された。また、右心室内にフィラリアの成虫が少数認められた。
この時点ではフィラリア症に伴う慢性腎不全IRISステージⅣの可能性を疑診していた。
しかし、腹部超音波検査では著しい尿の貯留と、膀胱結石、また、前立腺尿道に結石がつまっている像が確認された。
診断
膀胱結石と、それによる尿道閉塞による急性腎後性腎不全
フィラリア感染
僧帽弁および三尖弁閉鎖不全症
治療方法
カテーテルを装着し、排尿させてから2日後には速やかに血液検査上の高窒素血症は改善された。
その後、カテーテルを外すとすぐに尿道閉塞し高窒素血症になってしまうことから、ご家族と相談して手術を行い膀胱結石および尿道結石を摘出することとした。
長期間の炎症により著しく肥厚した膀胱粘膜
支持糸をかけ、膀胱切開をし、膀胱内を洗浄している。
本症例では膀胱粘膜の広範な炎症と壊死が認められたため、膀胱粘膜の組織採材も行った。
摘出された結石
形成された状況から考えるとストルバイト結石である可能性が高いが、結石分析を行うために外注検査を実施している。
治療・術後経過
術後より食欲や活動性が徐々に改善された。
尿路閉塞していた期間が長期であったため、尿失禁が軽度に残っているが改善されつつある。
今後、フィラリア感染と心臓の弁膜症について、治療を行っていくかどうかについてはご家族と相談して決めることとした。
担当医:白井 顕治
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