未避妊のメス犬において乳腺腫瘍は比較的発生頻度の高い腫瘍である。乳腺腫瘍は良性乳腺腫瘍を長期間放置すると悪性科することが指摘されているため、針吸引生検によって乳腺由来腫瘍であることが確認された場合は、切除を行って病理検査を実施します。また、避妊手術を行っていないわんちゃんであった場合には、乳腺摘出時には同時に卵巣および子宮を摘出することが一般的です。そうすることにより、術後の乳腺腫瘍の発生頻度を優位に低下できることが報告されているためです。
実績詳細
オーストラリアンシェパードの乳腺腫瘍
検査結果
触診の結果、胸部にしこりを認めたため、針吸引生検を実施した。
ーーーー以下、針吸引生検所見ーーー
腫瘤からは、腺上皮ならびに筋上皮と考えられる上皮細胞が得られており、他方の腫瘤からも、腺上皮と考えられる上皮細胞が得られています。いずれの細胞も異型性に乏しいことから、良性の混合性乳腺腫瘍や乳腺腺腫などが疑われますが、乳腺腫瘍の悪性度は細胞異型性の程度と相関していないことがあり、また乳腺腫瘍は増大することで悪性に転化する可能性が示唆されています。
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治療方法
乳腺腫瘍が強く示唆されたため、外科的に片側乳腺および鼠径リンパ節の摘出を行うこととした。
本来であれば乳腺腫瘍の手術時には今後の乳腺腫瘍の発生を下げる目的で卵巣および子宮の摘出も同時に行うことが一般的であるが、本症例ではご家族の希望により行わなかった。
乳腺を前後に分割し、それぞれ摘出する。
摘出する際に、胸部および鼠蹊部から太い血管が流入するため、留意して結紮する。
摘出後、周囲をトリミングして術創の縫合を行う。
術後の外貌
術部が引き連れることなく縫合されている
摘出された片側乳腺
治療・術後経過
術部は感染を起こすことなく、良好に癒合した。
ーー摘出した乳腺の病理組織学検査の結果ーー
摘出された乳腺では、複数の部位に結節性の腫瘍が形成されており、いずれも良性の乳腺腫瘍と診断されます。腫瘍の境界は明瞭で、周囲組織への浸潤性は認められません。摘出状態は良好で、今回の切除により予後は良好と考えられますが、多発性に形成されていることから、残存する乳腺からの新しい腫瘍の形成について経過観察をお勧めします。
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病理検査結果より、予後は良好であると判断される。
卵巣および子宮および片側の乳腺が残っているため、注意して経過を観察していく。
担当医:白井 顕治
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