腫瘍に対する治療を考える際に、完全なる正解や明らかな間違いということはそう多くはない。その時に考えている信条に沿った治療を行ってあげることが重要といえる。今回の症例では、恒例の猫であり、なおかつ慢性腎臓病グレード3を有しているため、通常は手術の適応と考えることは少ないが、インフォームドコンセントを聞いた後にご家族が行った判断次第では実施することもある。本症例では破裂しており、本人のQOLを低下させていた腫瘤を摘出することができたため、良好な結果が得られた。
実績詳細
サイベリアンの肩部に形成された毛芽腫の切除
検査結果
症例は高齢の猫(サイベリアン)である。既往歴として慢性腎不全グレード3を患っている。
肩に腫瘤性病変ができ、自壊してしまっている。という主訴であった。
腫瘤は境界明瞭で底部には固着しておらず、長期間存在していたという既往歴から、良性~低悪性度の腫瘍性病変であることが推察された。
治療方法
治療方法としては外科療法が考えられるが、すでに進行したグレードの慢性腎臓病に罹患しているため、ご家族と相談を行った。その結果、細胞診や組織生検は実施せず、腫瘍部分のみを摘出し、現状の左肩甲~肘部の腫瘍からの排液を減らしてあげたいという希望だったので、腎疾患のケアを行いながら手術を行うこととした。
治療・術後経過
麻酔をかけ、腫瘍を最小マージンで切除を行った。
摘出後の外観と腫瘍部分
術後8日で抜糸を行った。
ーーー以下病理所見ーーー
摘出された左肩部の腫瘤は、毛包に分化する芽細胞由来の良性腫瘍です。やや大型の病変が形成されていますが、腫瘍の境界は明瞭で、マージン部に腫瘍性の病変は認められません。摘出状態は良好で、今回の切除により予後は良好と考えられます。
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病理所見より、予後は良好と考えられる。
今後は慢性腎臓病のケアを行いつつ、余命を全うさせていくものとする。
担当医:白井 顕治
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