膣に形成される平滑筋腫は未避妊の高齢の雌犬に比較的よく発生する腫瘍で、良性腫瘍であるため大型になるまで自覚症状が出ないことが多いです。
今回の症例のように、膣の中でも特に外陰部に近い場合にはご家族が気づく場合もありますが、より奥の腹腔内側に近い部分で形成された際には発見が遅れることもあります。
骨盤腔に大きな腫瘤が形成されることにより、物理的に排便や排尿が困難になることが発見のきっかけになります。形成された場所によって、今回の症例のように会陰部からアプローチするのか、腹腔内側からアプローチするのかを分けます。
実績詳細
ジャックラッセルの膣に形成された平滑筋腫
種類 | ジャックラッセルテリア |
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年齢 | 14歳 |
診療科目 | 軟部外科・整形外科 産科・小仔科 腫瘍科 |
症状 | 肛門の下にできものがある |
症状の概要
検査結果
視診・触診を行うと、症例は肛門の下、会陰部正中に鶏卵よりはやや小さい腫瘤が皮下に蝕知された。
エコー検査において、腫瘤は直腸ではなく膣に由来していることが分かった。
形状と場所より、平滑筋肉腫が疑われるということと、発見してからの拡大が早かったことから、ご家族と相談し細胞診を実施せずに摘出手術を行うこととした。
治療方法
術前の外観。外陰部の上が盛り上がっていることがわかる
止血のため膣部に腸鉗子をかけて切開を実施し、腫瘤を露出した。
摘出された腫瘍と、縫合後の会陰部
子宮にも異常が認められたため、併せて切除を実施した(腹部正中切開開腹)
治療・術後経過
ーーー以下病理検査ーーー
腟の腫瘤は、平滑筋腫と診断されます。平滑筋腫は、未避妊のメスの子宮や膣、会陰部に好発する傾向があります。病変の境界は明瞭で、マージン部に腫瘍性の病変は認められません。摘出状態は良好で、今回の摘出により予後は良好と考えられます。
子宮では、子宮内膜の過形成が起こっています。また、一部では子宮腺筋症も伴っていますが、検索した組織には炎症性の病変は認められません。
両側の卵巣では、複数の嚢胞が形成されていますが、この変化は、しばしば偶発的に卵巣に認められる非腫瘍性変化です。
術後2週間弱で抜糸し、治療終了とした。
経過良好
担当医医:白井 顕治
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