全身性疾患が存在している中での外科手術には、通常と比べても術前・術後のケアが重要となってきます。本症例はリンパ管拡張を伴うリンパ球プラズマ細胞性腸炎と乳腺腺癌を合併したわんちゃんの治療経過です。
実績詳細
タンパク漏出性腸症の管理中に発生した乳腺腺癌の外科治療
検査結果
腫瘤部が赤みを帯びていたためにパンチ生検を行った結果、乳腺腺癌であり、非炎症性乳癌という結果だった。
胸部レントゲン検査や腹部超音波検査において転移は認められなかった。
ーパンチ生検 病理組織診断コメントーーーーーーーーーーー
摘出された乳腺では、悪性の上皮性の腫瘍が形成されており、乳腺腺癌と診断されます。腫瘍細胞は未分化で悪性度の高い腫瘍と考えられますが、明らかなリンパ管への浸潤は認められず、検索した組織からは、炎症性乳癌である可能性は低いと考えられます。しかし悪性度の高い腫瘍であり、周囲組織への広がりやリンパ節への転移が危惧されます。急速な増大を示していることから、病状の進行について経過には注意が必要です。
治療方法
症例はステロイド剤を服用しないと血中アルブミン値が維持できない症例だった。
低アルブミン、ステロイド剤共に術創の治癒に悪影響を及ぼすため、血中アルブミン値を確認しつつ、術前術後のみステロイド剤を漸減休薬し、手術に臨んだ。
術式は卵巣・子宮摘出と部分(四分の一)乳腺切除を行った。
術後の病理組織診断においても乳腺腺癌であり、リンパ管内への浸潤が認められた。
治療・術後経過
鼠径リンパ節およびリンパ管への腫瘍細胞の転移が認められた。
ーーー以下病理コメントーーー
摘出された乳腺では、左第5乳腺部において、悪性の乳腺腺癌が形成されています。マージン部には腫瘍細胞は認められませんが、腫瘍は浸潤性に増殖しており、鼠径リンパ節に初期の
転移性の病変が形成されています。悪性度の高い腫瘍であり、今後、その他のリンパ節、肺等への転移の拡大など経過には注意が必要です。
タンパク漏出性腸症の管理を行い、抗がん剤の投与を行った。
6か月後に乳腺にしこりが触知され、針吸引生検を行った結果、乳腺腫疑いという結果が得られた。
外科療法を行わずに、対症療法を行っていたが、発見から4か月後に、急性呼吸不全により生涯を終えました。
呼吸不全の原因としてはタンパク漏出性腸症もしくは腫瘍随伴症候群による血栓塞栓症の発症が疑われました。
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